お風呂にて 前編






 風呂には、当然一緒に入る事となった。
 清澄は、脱衣所で一緒に服を脱ぐ渚に襲い掛かりたい気分に駆られたが、かろうじて堪えた。
 今回のイニシアチブは渚にあるし、メインディッシュの前につまみ食いは無粋だろうと。


「広いな」
 清澄が感想を漏らした。
 湯船からはうっすらと蒸気が上がり、浴室は既に温かい。
「先輩の家はどうなんですか?」
「まあ、うちも同じぐらいなんだけどな。個人的に、洋式ってのは珍しいんだよ」
「……普段、どういうお風呂なんですか」
「檜造り」
 そう言うと、清澄はプラスティックの椅子に座った。
 その背中を、渚がお湯をかけて洗いはじめる。
 それはもちろんスポンジなどではなく、渚自身の身体を用いていた。
 ボディソープをローションのように使って、身体を上下させる。
 清澄の背中は広くて、動くのも大きくしないといけない。
 けれど。
「え、えっと……気持ちいいですか、先輩……ん……あ、ん……」
 清澄の背中に自分の胸を擦らせるたびに、何だか自分の方が気持ちよくなっているのに渚は戸惑っていた。
 いや、『リクエスト』の形式としては正しいのだけれど……思惑と、少し違う。
「うん、いい……ってお前、今更だけど、面白いな」
「な、何が…っ…ですか?」
 鼻に掛かった声で、何とか渚は返事をする。
 尖った乳首が、清澄と自分の身体の間で押しつぶされる。
 渚は身体を上下させるたびに、甘美な快感が胸から広がっているのを感じていた。
「リクエストするならさ、自分がしてもらう方がいいんじゃないかなって思ってな」
「んー……私は、先輩に気持ちよくなってもらう事が、私にとっても、気持ちいい事ですから……これでいいです。それに……」
「それに?」
 渚は後ろから、清澄の身体に腕を回した。
 そして、耳元で囁く。
「先輩だって、私に……その…する事の方が多いじゃないですか……」
「当然。ちょっと顔見せてみ」
 清澄がいきなり振り返った。
「あっ……」
 ごく間近に、清澄の顔が迫る。
 紅潮し、トロンとした表情の渚を見て、彼は満足げな笑みを浮かべた。
「うん、いいな」
 渚は誘われるように顔を寄せ、清澄に口付けた。
 高鳴る胸を彼の背中に押し付けながら、積極的に清澄の舌を求める。
 清澄はどちらかと言えば、渚の舌の動きに対応するように自分の舌を動かしながら、口内に唾液を溜めた。
「んっ……ぁん……」
 渚は、それを小さく吸い上げ嚥下していく。
「……ちなみに俺は…っ…まだ何もしないぞ。『お風呂に入る』って言ったのは渚の方だからな。ここでは、俺は受け身だから……」
 頭の中で、清澄の言葉の意味を吟味した。
 命令を。
 清澄は、渚に命令を与えられて動く。
 つまり、いやらしい事をして欲しければ、自分で言わなければならない。
 今更な事に、渚の顔がかぁっと赤くなった。
「……じゃ、つ、次は前を洗いますから……」
「うん」
 渚は、唾を飲み込んだ。
「わ、私も……一緒に、してください……気持ちよく……」
 渚の太股を、愛液が滴り落ちた。
「じゃあ、前に……」
 おっと、と清澄は口をつぐんだ。
「先輩、命令いいですか……?」
 後ろからギュッと清澄を抱きしめながら、渚は囁いた。
「うん?」
「私に命令してください。前に回れって」
「前に回って洗ってくれ。一緒に気持ちよくしてやるから」
「はい」
 やっぱりこっちの方がいい。
 渚はそう思った。


 清澄の屹立するモノを、慎重な手つきで渚は洗っていく。
「もうちょっと、力を込めてくれると嬉しいんだが」
「ん……あ、はい……」
 声を上ずらせながら、渚はさらにスポンジに力をこめた。
 しかし、力が入らない。手がぶるぶると震える。
「本当は、マットとかがあればよかったんだけど、さすがにここに直に寝そべる気にはなれないしな……その辺が、残念といえば残念だと思わないか?」
「あ……ん……は、はい……んっ!」
 清澄は平然としている。
 けれど、渚はそれ所じゃなかった。
 懸命に、清澄の身体を洗うことに集中しようとするが。
「渚は、あとでもう一回洗った方がいいな。特にここは……」
 清澄の右足が、クイ、と上がった。
「ひぅっ!」
 清澄の足の甲が肉芽を押し、親指が渚の秘処に潜り込んだ。
 浅瀬で嬲られるような感覚に、渚の足がガクガクと痙攣を繰り返す。
「あ、あぁっ……せ、先輩……そんな強くされたら…洗えません……」
 なら、と清澄の責めは緩くなった。
 指を器用に動かし、秘唇を撫でるような動きを開始する。
 けれど、それはかえって渚を焦らす行為となり、彼女の身体の芯を不完全燃焼状態で燻らせ続けていた。
 息を切らせながら、清澄のモノを直に手で洗い始める。
 いや、洗い始めると言うよりも、もう完全な手淫状態だった。
「っ……渚……」
 左手で袋を揉みながら、右手で清澄のモノをしごきたてる。
「あ、あの……ここで、一回出しても……大丈夫ですよね?」
「渚、したい事を言う。それがルールだ」
 清澄の足もさらに積極性を増す。
 下から緩く突き上げてくる快感に身を委ねながら、もう渚の視界には清澄のいきり立ったモノしか入っていなかった。
「一回、ここで出して下さい……また、大きくしますから……お風呂の中で、もう一回、……お、犯してください」
 淫らな懇願をしながら、渚はグッと自分の腰を清澄の足に預けた。
「仰せのままに……っ……渚も……」
 ズボズボと遠慮なく清澄の右足親指が、渚の秘処を何度も犯す。
「あっ……あぁっ……指、は、入ってきて……先輩、私……あ、あっ、あぁん!!」
 虚ろな意識の中、渚の手の中で、清澄のモノが一際大きくなった。
「んっ……」
「ああぁっ!!」
 清澄の小さな呻き声と同時に、渚も絶頂に達する。
「はっ……あっ……」
 熱い迸りが、至近距離から渚の顔や首筋に降り掛かった。断続的に噴き出すそれを、渚は甘んじて受け止める。
「先輩の…いっぱい……んうっ!」
 清澄の足の指が引き抜かれる感触に、渚の体がブルッと震える。
 自分の顔から強い牡の匂いを感じつつ、渚は清澄の腰にしがみついた。
「すまん、渚……目に入らなかったか?」
 その渚の頬に清澄は手をあて、持ち上げた。
「平気……です……」
「あーあ、身体より先にとりあえず顔を洗うのが先かな、これは」
 小さく笑いながら、清澄は渚の顔に付着した自分の体液を指で掬い取った。
「んー……はい」
 ごく自然に、清澄の指の汚れを舐め取りながら、渚は返事をした。


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