お風呂にて 後編
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湯船に背を預けた清澄にもたれかかるように、渚も身を委ねる。
「ふぅ……こういうのもいいな、渚」 「はい。新婚さんみたいです」 言ってから、渚は自分の発言に顔が赤くなる。 「すると、これは予行演習か?」 さりげなく渚の頭に手を置きながら、清澄も天井に視線をやった。 「はい……えっと、先輩……まだ、私の番は有効ですか?」 「したくなったか?」 「したくなった……っていうより、してみたくなりました」 渚が身体を回し、清澄と向かい合う。 「じゃ、おいで、渚」 「はい」 渚は腕を伸ばすと、清澄にゆっくりと抱き付いた。 基本的な姿勢はさっきから変わらない。 ただ、水面はゆらゆらと揺らめき、渚の反応に合わせて微かに水音を立てる。 そして水面下では、清澄の指が渚の浅瀬を何度も往復していた。 「ん……あ、せ、先輩……ふぁ……指、じゃなくてぇ……」 少しでも快感を引き出そうと、渚がもどかしげに腰をくねらせた。 けれど、清澄は持ち前の性癖をもたげさせ、それを巧みに避けるように渚をジリジリとくすぶらせる。 「いや、風呂の中だと濡れてるのかどうか、よく分からないからな」 「焦らさないで……下さい」 キュッと渚が清澄の肩を掴み、彼は自分の悪い癖が出たのをやっと自覚した。 「そうだな。今は渚の番だし、あんまり意地悪するのも良くないか」 清澄は後ろから、小さく指を引っ掛けるように渚を持ち上げた。 いや、待ち侘びていた渚の方から、尻を持ち上げたというべきか。 狙いをつけ、剛直へと導いていく。 「んっ……あ……はぁっ……」 拳を握り締めながら、渚は自分の中を埋めていく清澄のモノの感触を味わっていた。 やがて根元まで埋まると、渚はいつの間にか清澄に身体を預けている自分に気がついた。 その渚の背中を、清澄は軽く叩く。 「俺としては、もったいないから、ゆっくりしたい」 「はい……じゃ、しましょう」 言いながら、渚が腰を持ち上げる。 大きく彼のモノを引き出し、息を吐きながらまた沈めていく。 清澄の要望どおり、ゆっくりゆっくりだ。 「……ずいぶん、積極的だな、渚」 渚のリードにあわせ、清澄も腰を引き、突く。 奥に小さく当たるたび、渚の声が微かに跳ねた。 「先輩の身体が目の前にあるから、何もしないのはもったいないです……んっ」 腰を上下させながら、目の前にある清澄の首筋に舌を這わせる。 「こそばゆいな」 小さく笑いながらも、清澄は渚のさせたいままにさせた。 「よくないですか?」 尋ねながら、清澄ならどうするか考えつつ、渚の舌が首筋を上下し、その愛撫は彼のうなじや耳にまで伸びていく。 その度に、清澄に背筋を小さな震えが走っていた。 「いいや。すごくいいから、俺もお返ししよう」 下腹部を刺激するそれは、渚の中を行き来する自分自身を膨張させる。 それを堪えながら、渚の頬にキスをした。 そのまま、横に移動した舌が耳を舐めると、渚の身体がビクッと反応する。 「ん……あ……あぁ……集中できません」 「よくないですか?」 おかしそうに笑いつつ、清澄が渚の耳元に囁く。 そのたびに、清澄のモノが貫いている渚の膣内が、締まりをよくしていた。 「やっぱり先輩……意地悪です……いいに、決まってます」 「気をよくした先輩は、さらにお嬢さんに奉仕するのだった」 渚の身体に舌を繋ぎながら、腰の動きを大きくしていく。 「私が出来なくなりますってばぁ……私も、するんですっ」 清澄の舌の動きが線なら、渚の舌は点だった。 唇で吸うたびに清澄の肌に跡がつくが構わない。明後日の後悔を今日する気にはなれなかった。 「頑張れ」 清澄は身体を湯船に沈ませると、渚の乳首に吸い付いた。 「あっ! ん……せ、先輩、わざと、やってますよね?」 たまらず、渚は清澄の頭にしがみついた。 ぶるぶると身体を小刻みに震わせ、快感に耐える。 「ん、わざと。でも、いいだろ?」 「は、あ……せ、せんぱぁい……」 清澄の頭を抱えているので、もう舌での奉仕は出来ない。 その分、腰の動きに集中する。 「ん……く。そう来たか」 「ふぁっ……あ…ん、ぅんっ……考えるのやめました、からっ……」 腰をうねらせ、声を上げる。 声を出すと楽になった。 浴室に、自分自身の声が反響するのはひどく恥ずかしかったけれど、それすらも頭の中で快楽のスパイスに変換される。 「というより、考えられないんじゃないか?」 「そんな事ありま…っ…せん……ん……あ、んんっ」 自分自身も追い詰められながら、渚はどんどん腰の動きを大きくする。 先端が自分の行き止まりを突くたびに達しそうになるのを、懸命に堪える。 「お……な、渚?」 「だって、先輩が意地悪なんだから……私だって、します」 「意地悪なのは地でな。悪かった」 優しく唇と舌で渚の乳房と先端の愛撫を続けながら、清澄は彼女に合わせて腰を揺らした。 「あ……んっ……でも、またするんですよね?」 「嫌か?」 清澄の手が、切羽詰った声を上げる渚の胸に添えられた。 「嫌じゃ……ないですけどぉっ……あ、あぁっ!」 「素直にしたらしたで、こうだもんな……それにしても、やっぱり風呂だと……いつもと違う」 硬く尖った乳首を指でノックしながら、清澄は赤ん坊のようにもう一方の胸に吸い付く。 そうしながら、渚との腰使いが次第に一致し始めているのを感じていた。 「はい……波が……」 「出たら、半分ぐらいになってるんじゃないか、この湯」 腰の動きにあわせて揺れ動く湯船の中身が、ザブザブと溢れ出ていく。 水独特の感覚が、清澄の身体と渚の下半身を包み込む。 「いい、です……どうせ、明日まで、入りませんから……」 「シャワーぐらいは、浴びるよな?」 「ん、あ……はい。あ、あ、波……ああっ……大きくなって……」 波の大きさが、次第に大きくなる。 それはつまり、二人の求め方が激しくなってきている証拠でもあった。 「分かりやすいな、これは……ん、もうちょっと激しく行くから、しがみついてろ」 「はい……ん、あっ、はぁんっ!!」 下からの突き上げがいっそう激しくなり、渚は必死に清澄の頭を抱えた。 けれど、清澄の責めは休まるどころか一層強くなる。 「っ……は……渚、もう少し……」 「あっ! はいっ! んっ! あぁっ!」 清澄のモノが徐々に膨張するのが、もどかしい。 今すぐにでも絶頂を迎えそうになる自分自身を、渚は懸命に押し留める。 「熱いな、渚の身体……」 「先輩の……身体も……あ……あ、あ、ああ、せ、せんぱぁいっ!!」 駄目だった。 渚が達し――同時に、清澄も限界を迎えた。 「……んぅっ!!」 渚の身体を力強く抱きつつ、清澄は根元まで彼女の中に自分自身を突き入れた。 「あああああっ!!」 ギュッと清澄の頭を抱きかかえながら、渚は高らかに声を上げた。 自分自身の中で、脈動する肉棒が熱い飛沫を何度も放たれているのを感じる。 「風呂だけに……よく、響くなぁ……声……」 その声もどこか遠くに感じられた。 衝動が収まると、渚は清澄に身体を預けた。 腕の力を抜き、清澄の頭を楽にする。 「は、あ……す、すみません……先輩……でも、気持ちよくて……」 「いいけどな。ん……で、どうする? しばらく、このまま?」 清澄は湯船から身体を上げると、渚を抱き締め返した。 「……にしたいです。身体、ダルくて……」 熱に浮かされたような表情のまま、渚は近づいてきた清澄の唇にごく自然に口付けていた。 十分後。 ガラリ、と浴室の扉が開いた。 「あー、危うくお約束をこなすところだった」 ヨロヨロとした足取りで、清澄は渚に肩を貸していた。 「ふにゃあ……頭がクラクラします」 桜色というよりもはや茹蛸のような肌になった渚は、グルグルと目を回していた。 「身体拭いたらしばらく、膝枕しながら団扇コースだな」 「ありがとー、ございますー……」 バスタオルを敷いた上に渚を寝かせると、清澄はまず彼女の身体を拭く事にした。 「俺がしてもらいたいとこだったんだがなぁ」 『あとがきへ→』 『次へ進む→』 『前へ戻る→』 『ノベル一覧へ戻る→』 『TOPへ戻る→』 |
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