An Impure Motive
2.誕生日の朝(後)






「やっぱり、勝也くんのお誕生日だし……もうちょっとだけ、サービスしてあげた方がいいかな、って思って……」
 一体、私はどんな顔をして、その言葉を口にしたのだろう。
 義理の息子の屹立する肉棒を見下ろしながら、瑞紀は、ある事に気づいた。
 濡れている。
 ショーツが、茂みの奥から溢れ出た愛液をたっぷりと吸い取っている。
 スカートに隠れているが、目と指で確認するまでもない。おそらく、本来の役割を果たせないくらいに、『女』の部分が透けてしまっているのだろう。秘処へ貼り付く布の湿り気に、不快とそれ以上の快が入り混じる。
 いつからだろう。
 彼の『男』へ、手を導かれた時か。上だけとはいえ、己のあられもない姿を彼の視線の上に晒け出した時か。それとも、彼と唇を交えた瞬間から、すでに濡れていたのだろうか。
 はっきりと分かるのは、自分が今視界に捉えている少年の肉棒に牡を感じているという事。あの人によく似た瞳が、期待と喜悦に満ちた眼差しで自分を見つめてくる。そう感じるだけで、己の中の牝が背筋を震わせる。
 疑う余地もない。私は、彼を『息子』としてでなく、『男』として見ている。
 心のどこかで、あの人の身代わりにしているだけだ、と訴えてくる自分がいる。
 そうじゃない、あの人とは別の異性だと分かっているはずだ、と囁きかける自分がいる。
 どちらの声も、痛く、苦い。なのに、聞こえるたびに秘芯が熱い疼きに苛まれる。それが、堪らなく嬉しい。
 瑞紀の首と胸が、ベッドの方へと迫っていった。近づいてくる肉棒が、溢れ出た牡の欲望で亀頭を濡らしている。その様を認識するだけで、茂みが一層潤いを増した。
 己の胸の膨らみに、自分の手を添える。柔軟で弾力に富んだ手応えが、掌に返ってくる。その二つの肉丘で、眼下の肉棒を丁寧に包み込んだ。硬く、熱い。触れただけで牡の生命力がひしひしと伝わり、生臭さが鼻腔と淫欲を刺激する。両の乳首は、すでに痛いくらいに直立していた。
 ちらっ、と瑞紀は、視線を上げた。視線の先に、義理の息子――勝也の悦楽に酔いかけた表情が映る。
 感じているんだ。息子のそんな顔を見て、瑞紀は、無性に嬉しく、愛おしくなった。私の胸で大事なモノを挟んであげているだけで、勝也くんがあんなに感じてくれている。これまで、自分の胸を自慢できると思った事はないけれど、今は、この膨らみの豊かさにただ感謝したい。
 じっくりと、といいたかった。しかし、平日の朝。時間を気にしないわけにはいかない。なのに――
「堪能してね」
 そんな言葉が、勝手に口から出た。自分の漏らした言葉に気づいた時には、胸の谷間からはみ出た亀頭に唇を捧げていた。
「うっ」
 軽い呻き声にあわせて、谷間に収まった肉棒が震える。亀頭の先端から、新たな雫が滲み出す。牡の最も汚穢(おわい)な具現から溢れているのに、瑞紀の瞳には天上からもたらされた極上の甘露のように映った。瑞紀の唇から舌が伸び、亀頭ごと雫を舐め取った。もう一度、肉棒が肉丘の間で震える。
(――もっと感じて――)
 自らの音なき声に衝き上げられて、義母は、淫らな奉仕へ没頭し始めた。



(――うわあ――)
 にわかに荒くなった官能の波に洗われ、勝也は、弓なりに背を反らした。
 股間の上では、己の牡を強く主張する愚息が、瑞紀の熱の籠もった奉仕に翻弄されている。亀頭を唇と舌が、その下から根本までを二つの肉丘が丹念に愛撫してくる。
 くすぐったく、甘ったるい電流が、神経の隅々にまで駆け巡った。
「う……くぅ!?……」
 全身を震わせ、声を押し殺す勝也。それでも、後ろに反れた顎を、何とか元の位置へ戻した。
 前方へ向け直した視線の先に、口と胸で肉棒を慰める瑞紀がいる。それだけでも己の中の牡を十分に燃え上がらせるビジュアルなのに、愛撫されている肉棒が他ならぬ自分のものなのだから、たまらない。
 憧れの女性が、あられもない姿で自分のモノに奉仕する。まだ、淡い想いを胸に秘めているだけで一杯だった二、三ヶ月前を思えば、信じられない光景だ。
「うん……んくっ……んむ……ぅんん……んふっ……」
 若く美しい義母の献身的な声が、艶を増して聞こえてきた。尿道の口や亀頭のくびれにまで這い回る舌の感触も、また電流へと変わって腰へ、背筋へと駆けていく。
 愚息を抱擁する美乳の動きにも一層の熱が加わり、亀頭に吹きかけられる吐息もまた熱い。それでも、歯を立ててきたり、胸からかかる力加減が粗くなったりする事はなかった。むしろ、奉仕は繊細に、扇情的に牡のツボをついてくる。
「……んむっ……むう……んん……んぅん……んふぅ……ん……んんんっ……んくっ……んん……ううんっ……」
 揉まれ、しごかれ、くわえ、舐めしゃぶられ――左右と、先端と、三方から刺激の雨が、容赦なく間断なく注がれる。悦楽は、加速こそすれ失速する事はない。
「うあ……ああっ……」
 歯を食いしばる余裕などすでになくなった勝也の、劣情に蕩かされた声が部屋の空気を侵していく。その声に促されたのか分からないが、瑞紀の奉仕も、さらなる精緻と淫靡の色に染まる。
 辛うじてこらえてきたものが、こらえきれなくなってきた。丹田の奥に、どろどろした熱い塊を感じる。十二分に蓄積され肥大化した塊は、先走りの雫と瑞紀の唾液にまみれた愚息の中を上昇しようとしていた。
「んん……んふぅ……………………ねえ……勝也……くん……?」
 不意に、瑞紀の唇が、それまでしゃぶっていた亀頭から離れた。胸の膨らみはまだ肉棒を挟んだままだが、それを揉みほぐす動きがやや緩やかになってきている。
「な……に……?」
 瑞紀の問いかけに、勝也は、どこか苦しく熱そうな声と表情で応える。外からの刺激が弱くなったために、一度昇りつめようとしていた熱い欲望が昇りきれず、中途半端な状態になってしまったからだろう。出るはずのものが出ない時の苦しみは、牡にとって想像を絶する。
「どう……気持ちいい?」
「気持ち……いいよ……………でも……」
「ん……でも?」
「もう少し……続けてくれる……と……うれしい……ん……だけ……ど……」
「そうね……もうすぐみたいね……」
「うう……はやく……」
「ふふっ……そんなにあせらないの……」
 愚息から、柔らかな胸の感触も離れる。代わりに、
「いつでも好きな時に出してね」
 という言葉が聞こえて、愚息が、一気に熱い粘膜で包まれる感触に囚われた。勝也が、改めて股間の方へ視線をやると、亀頭は、義母の唇の中へ完全に呑み込まれていた。根本には、また義母の細い指が絡みついている。
「うあっ、あああっ――!!」
 さらなる快楽の質の変化に、勝也の声が、また大きくなった。それが合図だったのか、瑞紀の首が、上下に激しく動き始めた。湿っぽい水音を立てて、唇から鈴口を出し挿(い)れし続ける。その度に唇で適度に締め、くびれから尿道の口まで粘膜が滑らかに滑り、余さず味わおうとするかのように舌を絡めてくる。
 首の動きに艶やかな黒髪が乱れては、空いている方の手で整え直す瑞紀の様子は、それだけで妖艶で淫靡だった。
 胸を使っていた時には舌と唇だけの触れるような愛撫だったのが、今は口内へと導き、その全てを駆使して肉棒に奉仕している。その分だけ、全身を包み込む情欲の炎が、一段と燃え上がったのかもしれない。
 悦楽に震えるばかりだった勝也の両手が、いきなり瑞紀の頭に添えられた。同時に、横たわったままだった腰が、にわかに動き出す。
「ううっ!!」
 瑞紀の苦痛交じりの呻きが聞こえたが、それは、少年の青い獣の獰猛さを呼び覚ましただけに過ぎなかった。
「……うぅ……うっ……うううっ……!!」
 義母の目尻から、うっすらと涙が浮かんだ。それを視界に収めて、多少罪悪感を覚えなかったわけでもない。でも、それだけでは止まらなかった。
 自らの手で、瑞紀の頭を上下に動かす。さらに、自ら腰を振って、彼女の口へ愚息を衝き上げる。瑞紀の口から、垂れ流しとなる苦痛交じりの声。無理矢理頭を動かされて、口の奥まで生臭い牡に衝かれ続けているのだから、悲鳴の上がらない方がおかしい。
 だが、涙を浮かべていても、瑞紀は、決して拒絶してこなかった。愚息が挿入を繰り返す間、どれほど苦しくても歯を立てる事は一度もなかった。ひたすら、己の口を懸命に動かし続けた。そんな瑞紀に応えるかの如く、勝也の腰の動きも、ますます激しくなっていく。くぐもった苦悶の声が、ひたすら垂れ流しとなる。
 長くは保たなかった。先ほどの口と胸の奉仕だけでも相当敏感になっていた少年の牡は、たちまち極限にまで追いつめられた。
「……はあ……はあっ……瑞紀さん……出す……よ――」
 一瞬にして、それまで激しく動かしていた瑞紀の頭を、それと腰の動きをぴたっと止めた。動きは止まっても、肉棒の中から昇ってくるものはもう止まらない。
「――うあっ……あああっ!!」
 絶叫と共に、勝也は、極限まで燃え上がった欲望の塊を亀頭の先で弾けさせた。



 いきなり、頭をつかまれた。それから、咥(くわ)えていたモノを喉まで衝かれた。
 その刹那、気が遠くなりかけた。あまりの苦しさに、喉の奥から戻してしまいそうになった。反射的に、喉がくぐもった呻きを漏らす。しかし、そんな事にかまってくれる様子もなく、義理の息子は自分の腰を動かし始めた。腰の動きにあわせて、瑞紀の頭も上下に動かされ、口腔を荒々しく犯される。
 それでも、目元の熱いものは苦痛のためにこみあげてきたわけでない。彼女は、それを十分すぎるほど理解していた。

 もっと衝いて。
 もっと犯して。
 この口を汚れた性器のように辱めて――

 歯を立てずに締めたり、舌をツボとなる部分へ転がしたりして、ひたすら出し挿れされる肉棒へ、さらなる快感をもたらしてやる事だけに専念する。牡の先走り液と己の唾液が溶け合わさった蜜が口腔を満たし、顎まで滴り落ちる。子猫がミルクを舐めるのに似ているが、それよりも淫猥な音が、脳髄にまで響いてくる。
 また、『女』の部分から愛液が溢れ出している。ショーツに収まりきらず、太股まで伝ってきている。もしかしたら、スカートにも染みがついてしまっているのだろうか。だが、そんな事を確認している余裕などない。
 亀頭の蠕動が激しくなった。根本から僅かに膨れ上がって、口腔を圧迫する。来る、と瑞紀は悟った。両太股の付け根の間が、弓の弦の如く引き締まる。
「……くう……ううっ……瑞紀さん……出す……よ――」
 口腔に肉棒を侵入させた状態で、勝也は、義母の頭を止めた。
 一瞬の空白が経て、
「――うあっ……あああっ!!」
 勝也の雄叫びとともに、唇の内側で液化した牡の欲望が肉棒から一気に噴出された。
 白く濁っているであろう熱い粘液が、口腔をたちまちのうちに満たしていく。生臭く苦しょっぱい。これが他の男の射(だ)した液体なら、一滴だろうと耐えられずに吐き捨てた事だろう。息子と、あの人の二人のものだから、受け入れられる。愛おしい存在が自分に満足して出してくれたものだから、悦んで飲む事ができる。
 それにしても、吐き出される精液の量が半端ではなかった。まだ、射出が終わらない。つい数時間ほど前も、自分の口へ、前へ、後ろへ、何度も放っているはずなのに、もうここまで溜まってしまうものなのか。まだ青い牡の想像を絶する快復力に驚きを覚えながら、瑞紀は、際限なく溢れる粘液を嚥下し続けた。
 喉の辺りでよく絡みつき、何度もむせそうになる。それを耐えて、瑞紀は、必死に飲み下していく。けれども、肉棒が射出する量は、それ以上に多い。薄い唇から零れ落ちた精液が、幾筋もの流れとなって顎の辺りまで汚した。
 やがて、肉棒からの放出が収まった。
「……はあ……はあっ……………ふうっ――」
 勝也の満足げな声音が、頭上から聞こえてくる。
 瑞紀も、何とか徹底的に吐き出された精液をほとんど飲み干し、さらに、口の中で硬度を失いつつある肉棒を吸ってやった。
「うっ」
 呻きとともに、尿道の口から漏れた残滓を飲む。最後に、亀頭から根本まで綺麗に舌で浄めてから、瑞紀の口は、ようやく肉棒から離れた。
「ありがとう、瑞紀さん……とっても、良かったよ」
「ご満足いただけたかしら?」
 顔を上げた瑞紀が、勝也へ問いかける。
「ああ、もうこれ以上にないってくらい」
 そういって笑いかけてくる義理の息子の表情に、あの人の面影が重なって見えた。瑞紀の胸に、微かな痛みが走る。
「あ、瑞紀さん」
「何?――」
 そのまま、言葉が続かなかった。すぐ目の前に、まだ熱の覚めやらぬ勝也の顔があった。
「じっとしていて」
 そう言われただけで、身体が見えない糸に絡め取られたかの如く動けなくなる。顎の位置に、少年の息がかかる。
「綺麗にするから――イヤだったら、言ってね」
 熱く湿った感触を顎に感じて、瑞紀の双眸が一瞬大きく見開かれた。舌の感触。間違いない。勝也の舌が、顎から垂れている白濁液を拭き取っている。
 そんな事しなくてもいいのに――
 そう言いたかったが、舌の感触が気持ちよくて、一秒でも長く味わいたくて、声が出なかった。
 残滓を一通り舐め取ったのだろう、勝也の顔が瑞紀から離れる。
「別にわざわざやらなくてもよかったのに……おいしくなかったでしょう?」
「んー、まあ俺が射したもんだしね。それに、瑞紀さんだって飲んでくれたじゃん」
 勝也の言葉に、またも赤面してしまう瑞紀。そんな彼女を、二本の腕が優しく包み込む。
「キスして……いい?」
「ん……」
 二人の唇が、ゆっくりと重なり融(と)け合った。



 カーテンの隙間から差し込む陽光は、少年の目覚めた時よりも明るく美しい輝きを帯びていた。


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