奥様は同級生
分岐部分






2.じゃあ、お願いするか

 雄治は少し迷ってから頷いた。
「ん……それじゃ、頼む」
「う、うん……」
 雄治が身を起こすと、加奈ははだけたブラウスの前を手で押さえながら床に降りた。フロアはフローリングになっており、思ったよりずっと清潔だ。
「ゆー君、座る?」
 雄治はテーブルの縁にもたれ掛かるような状態のまま首を振った。
「いや、いいよ。このままで」
「ん……分かった。えっと……それじゃ……」
 加奈は雄治の前に立つと、そっと跪いた。雄治のズボンで大きくテントを張った股間が、加奈の目の前に来る。
 ジー……っとジッパーを下ろす音が、やけに室内に響いた。
 加奈は胸を高鳴らせながら、おずおずと布地越しの雄治のそれに手を触れた。体温よりも遥かに高い雄治のモノの熱が、加奈の掌を通して伝わってくる。
 自分が舐めやすくするために、トランクスから雄治のモノを引き出す。力強く脈打つそれは、大きく傘を張りながら先端からは既に先走りの液を溢れさせていた。
「……あ」
 それを見ただけで、加奈の心音がさらに早まる。
 チラッと雄治を見上げると、加奈を見下ろしていた雄治は小さく頷いた。それで覚悟は決まった。
「ん……」
 竿に片手を添え、加奈はゆっくりと自分の唇を雄治のモノの先端に近づけていく。小さく開いた唇から舌を延ばして、チロッと先走りの液を舐め上げた。
「っ……!」
 雄治の腰がピクッと震える。
 構わず加奈は軽くキスをするように先端に口付け、舌先でカウパー腺液を掬うように舐める。
「ん……ふぅ……ぅん……」
 亀頭全体に唾液をまぶすように舌を這わせながら、加奈は自分も濡れ始めているのを自覚していた。空いている方の手を自分の股間に伸ばすと、薄く開いた秘唇は粘液質な愛液でぬるぬるになっていた。
「は……あ……んむっ……ふぅん……」
 加奈は雄治に頭を撫でられながら、彼の怒張に奉仕を続ける。心地良さに半ば酔いながら、亀頭のくびれに舌を尖らせて刺激を与える。
 鼻息が荒くなり、身体全体が熱い。雄治に撫でられている頭でも、自分で慰めている秘処でもなく、自分が雄治を気持ちよくさせているという精神的快感が加奈を高ぶらせていた。
 時折雄治を見上げると、普段より切なそうな表情をしている雄治の顔が目に入る。そんな顔を見ると、加奈としてはもっと雄治を気持ちよくさせてあげたいと思う。
 加奈は雄治のモノに添えている手を少しずつ上にずらしながら、舌で竿を刺激し始めた。親指で先端を弄るたびに、雄治のモノはビクビクと痙攣して腺液が滲み出る。それはシャフトを伝って裏筋を舐め上げる加奈の口内に生臭い味が広げるが、加奈はまずいとは思わなかった。
「ぅ……ぁ……か、加奈……」
 快感に堪えるように、雄治が加奈の名を呼ぶ。
「ふ……ぅんっ……ゆー君、気持ちいい?」
「ああ、すごくいい……」
 呻きながら、雄治は何度も加奈の髪を梳くように撫で続ける。時折力がこもるが、我慢しているのだろう。すぐに包み込むような手の動きに戻る。
 加奈はさらに頭を下げ、袋に舌を伸ばした。その感触に、雄治の腰がビクッと跳ねる。
「ん……うぁっ……お、おい……?」
「ぅん……んむっ……気持ちよくない? ならやめるけど……」
「い、いや、すごくいいけど……」
 多分、学校でっていうのがいつもと違うんだろな、と加奈の頭のどこか冷静な部分がそう分析していた。それにひどく久しぶりというのも理由の一つ。
 自分だけでなく、雄治にも高まって欲しい。考えるというよりもごく当たり前の認識として、加奈は奉仕にさらに熱を込めていく。
 袋の皺の一つ一つを丹念に舌で舐めながら、唾液と腺液にまみれた雄治のシャフトを手で上下にしごく。
 そしてそれは加奈自身の昂ぶりにも通じていた。粘度の高い蜜液が秘奥から溢れ出し、滴となってフロアに糸を引きながら垂れ落ちていく。
 中指をそっと秘唇に割り込ませながら、加奈は頭を雄治の先端に戻した。
 ごくり、と一度唾を飲み込んでから、加奈は小さく口を開く再び竿に手を添え、角度を調整する。
 そして、いつもより二回りほども大きな雄治のモノをゆっくりと口に含み始めた。
「ん……ん、んむっ……んんうっ……」
 同時に加奈の下では、中指が熱くぬめった蜜壷に挿入を開始していた。
 一瞬、上下の口を同時に雄治に犯されるような錯覚を加奈は感じた。
 意識が真っ白になる。
 コンマ何秒かほどの短い間、加奈は軽い絶頂に達していた。
 が、身体の方は動いたままで、雄治のモノを口に含んでいる最中に加奈は我に返っていた。雄治にも気づかれていないほどの、短い期間だったらしい。
 息苦しさを感じながらも、加奈は雄治のモノを根元まで飲み込んだ。喉奥に、雄治の先端が当たるのを感じる。
「ふ……う……」
 頭上で、雄治が大きく息を吐くのが分かった。
「んぅ……」
 舌で裏筋を刺激しながら頭を引く。
 雁首の辺りで唇を締め付け、先端近くまで引き抜いてから再び口内に雄治のモノを飲み込んでいく。口内に唾液が溜まるが、加奈に飲み下す余裕はなく口の端から顎を伝っていった。
「ふぅんっ……んむっ……んっ……ぅんっ……」
 雄治のモノを往復する唾液の音と、指で弄っている秘唇から漏れる愛液の跳ねる音が小さな部屋に響く。雄治の反応が徐々に過敏になっていくのと同時に、加奈は自分の感度も高まっていっているのを感じていた。
 加奈の後頭部辺りに添えている雄治の手に、また時折力がこもり始める。だが、それでも自制できる雄治の忍耐力はたいしたものだ、と加奈は思う。
「ん……んんっ……はぁ……ゆー君、もぉ……限界?」
 雄治のモノに口内で舌を絡めながら、加奈は雄治に尋ねた。
「あ、ああ……さすがにもう出そうだ……加奈、口で……」
「ぅん……」
 加奈は小さく頷き、さっきまでよりさらに激しく口唇奉仕に熱を込め始めた。それに連れて、秘処を弄る指の動きもより激しくなる。いつの間にか、指の数も中指の一本から人差し指を加えた二本に増えていた。
 下からの突き上げに、思わず気をやりそうになる。雄治の指も気持ちいいが、それとは別の意味で自分の一番気持ちいい場所は、当然ながら自分自身が一番よく知っていた。
 加奈は、膣内のザラザラする部分を何度も指で擦りながら、時折敏感な肉芽を親指で刺激した。
 立て膝がガクガクと震え、崩れ落ちそうになるのを堪えながら、雄治のモノを往復させている唇を締め付ける。
「んっ……ぅんっ……ん……んんっ……んむっ……んくっ……ふぅんっ……!」
「か、加奈……もう、駄目だ……っ!」
 雄治のモノが加奈の口内で一回り大きく膨張する。
「んぅっ……!」
 加奈は雄治のそれを限界まで飲み込んだ。
 ビュクッ!
 雄治のモノの脈動と同時に、喉奥に熱い白濁液が浴びせ掛けられる感触。
「っ!」
 同時に、根元まで秘唇に深々と飲み込まれた二本の指により、加奈自身も三度目の絶頂を迎えていた。意識を白い閃光に何度も飲み込まれそうになりながら、加奈は断続的に噴き出して来る精液を夢中で飲み下していった。
 しかし、ここ二週間ほど溜まりに溜まっていた雄治の欲望は、とても加奈が全て飲み下せる量ではなかった。加奈の唇の端から、白濁とした液体が溢れ出る。
 やがて衝動が収まりつつあるのか、雄治のモノの脈動は徐々に小さくなっていった。
「ん……んくっ……」
 加奈は口内に残った雄治の精を、ためらう事無くコクンと飲み干す。
「加奈……大丈夫か?」
「ん……平気。ゆー君、気持ちよかった……?」
「ああ……すごくよかった。と、口の端から垂れてるぞ?」
 雄治は加奈の唇の端から顎に掛けて糸を引いている精液を指で掬った。
「あ……ちょっと待って」
 加奈はティッシュで指を拭おうとする雄治の手首を掴んだ。
「え?」
「それも綺麗にするから……」
 加奈は当然のように雄治の指の白濁を舐め取り、指を性器に見立てて吸い始める。
「お、おい……!?」
 雄治の人差し指に舌を這わせ、吸い、絡ませる。
 雄治のモノとはまた違う、だが確かに雄治自身の味に、加奈のまだ高ぶっている官能が反応する。それは今までの突き上げ上り詰めていくものではなく、じわりと滲み出てくるような気持ちよさだった。
「ぅん……ふぅ……」
 ひとしきり満足すると、加奈は雄治の指を自分の口から解放した。唇が離れた拍子に指との間に細い唾液の糸が橋を作って、ぷつんと途切れる。
 小さく息をついて顔を上げると、雄治はボーっとした顔で加奈を見ていた。
 ちょ、ちょっとやりすぎたかな、と加奈は少し冷静になった頭で思った。
 自分の所業を回想し、ボムッと顔を真っ赤にさせる。
 ……ちょっとどころではなかったかもしれない。
 しかし、加奈としては自分から唯一、能動的に雄治に快楽を与える手段なので、口でするのは嫌いではなかった。
 雄治が自分の恥ずかしがる顔を見たがる気持ちに、ちょっと通じるものがあるのかもしれない、と加奈は思っていた。
 もっとも、普段は恥ずかしさが先にたって、あまりしないのだけれど。
 出したばかりの時は中程まで角度を落としていた雄治のモノは、いまや完全に復活を遂げていた。
 その先端には、さっきの射精でまだ尿道に残っていたものだろう、白濁液が表面張力で珠を形成していた。
「あ……まだ残ってる」
 反射的に加奈は、再び雄治の股間に顔を寄せた。
 尿道に残る精液を吸い上げ、竿にこびり付いている白濁の残滓を舌で清めていく。
 その感触に、加奈の滅多に見せない淫靡さに見惚れていた雄治がはっと我に帰った。
「ちょ、ちょ、ちょっと待った、加奈!」
 雄治は慌てて自分の股間から加奈を解放した。いや、加奈から自分のモノが解放されたのか。この際どちらでもいいが。
 とにかく、このまま二回も加奈の口内で出すのは勿体無い。
「え、えっと……」
「え……?」
 いつになく口ごもる雄治に、加奈はきょとんとした顔をしていた。
 意を決して雄治は口を開く。ええい、こう言うのは恥ずかしいんだけどな。我慢が出来ないんだから仕方がない。
「二回目は……その……俺としては口じゃなくて、加奈の中でしたいんだけど……」
「あ……」
 思いつめたような表情の雄治に見つめられ、加奈の顔が再び真っ赤になる。
「ん、あ、うん。そうだね……」
 加奈はしどろもどろな返事をするのが精一杯だった。

「そっちの机に腕をついて……うん、そう」
 背後に立つ雄治に指示され、加奈は立ちバックの姿勢で机の上に上半身を預けた。
「いくぞ……?」
「ん……あ……うん」
 加奈の秘処に雄治のモノが押し当てられる。加奈のそこは雄治に奉仕していた間も自分自身で慰めていたためか、すっかり準備が整っていた。
 雄治はゆっくりと、熱を持った加奈の秘処の中に自分自身を送り込み始めた。
「あ……はあっ……は、入ってくる……っ!」
 徐々に侵入してくる脈打つ存在を、加奈は背を仰け反らせながら受け入れていく。
 雄治は根元まで加奈の中に挿入を遂げると、やや強い調子で腰を動かし始めた。二度目なので、かなりの余裕がある。
 加奈の背中に覆い被さるようにしながら、耳元で囁く。
「さっきは加奈にさんざん気持ちよくしてもらったから、今度は俺の番だな」
 そして、耳の裏に小さく息を吹きかけた。
「はぁ……あんっ……耳駄目ぇっ! やぁっ……あ…あんっ…くすぐったいよぉ…!」
「くすぐったいだけじゃないだろ?」
「ぅん……すごく気持ちいいけど……あ、あっ……またっ……はぁんっ!」
 耳への攻めに過敏に反応する加奈。
 頬を高潮させながら自分の行為に反応してくれる加奈の姿が、雄治はすごく好きだった。もっと気持ちよくしてやりたい。その想いが募り、耳だけでなく首筋や背中にまで舌を這わせる。
「は……あ……ぁあんっ! ゆー君……気持ちよすぎる……ん……んんっ!」
「いいよ、どんどん気持ちよくなって。何度でもイッていいから」
 腰を強い調子で加奈の中に送り込みながら、雄治は顔の届く範囲にまんべんなく舌を這わせる。その度に加奈の背中が波打ち、立っているのも辛いのか膝がガクガクと震える。
 雄治はふと思いついて、人差し指と中指を加奈の目の前に差し出した。
「ほら、舐めて……」
「んぅ……」
 加奈は息を荒げながら、そっと雄治の指を口に含む。
「ぅん……ふぅっ……んっ……んくっ……んむっ……」
 下からの突き上げてくる刺激から耐えるように、加奈は懸命に雄治の指をしゃぶる。
「美味しい?」
「ふぅ……ん、うん……ゆー君の指……好き……ん、ふぅっ……」
 加奈の口に自身の指を性器に見立てて往復させながら、雄治は少しずつ身体をずらし始めた。加奈は雄治の成すがままに、机から上体がずれ落ちようとしていた。
「立ってるのも辛いだろ? ちょっと体位を変えるから」
 雄治は腰を密着させたまま、自分のお尻をフロアまで落とした。それに引きずられる形で、加奈の身体も下に落ちる。
「ふぁっ……」
 ずんっ! と自分の奥深くが雄治のモノに突き上げられる感覚に、加奈はたまらず口を開いた。ちゅぽん、と唾液の音を立てながら、雄治の指が加奈の口から解放される。
 背面座位の形に移行した雄治は、両手で加奈の太股を持ち上げ、一層深い結合を求めようとする。
「くっ……あっ……ゃだ……これ、恥ずかしいよ、ゆー君っ……あ、あぁんっ!」
 加奈は大股開きの形になっている自分の体勢を悟り、白い肌をピンク色に染めた。しかし抗おうにも、雄治のモノが自分の子宮を突き上げてくるたびに頭の中が真っ白になってどうする事も出来ない。
「加奈」
 すぐ真横から雄治に呼び掛けられ、加奈はそちらを向いた。
「あ……んぅっ!?」
 間近にあった雄治の顔にすばやく接近し、唇を塞がれる。求めてくる舌に拒む理由はない。半開きにした唇から割り込んでくる雄治の舌に自分の舌を合わせながら、加奈はやや不自然な体勢で雄治の首に自分の腕を絡めた。
 雄治の先端が自分の最奥を突き上げる度に、加奈の頭に白いフラッシュが走る。いつしか加奈自身も無意識に腰を使い始めていた。
「は、あ……や……だめっ! ……あ、あぁっ……ゆー君っ…ん、んぅっ!」
 激しく雄治が腰を送り込むたびに、意識が何か訳の分からない奔流に飲み込まれそうになる。
 自分の意思ではどうにもならない域まで快楽の波が押し寄せ、加奈はそれに流されないように必死に雄治にしがみついた。だが、それもすぐに限界を迎えた。
 唇を重ねながら、雄治が一際強く加奈の最奥を貫いた。お腹の中を掻き回していた雄治のモノが最後の膨張を遂げ、加奈の体内で爆発した。
 瞬間、加奈の頭の中は真っ白になった。
「んうぅっ!」
 口を塞がれているので声を出すことは出来ない。朦朧とする意識の中でも、上と下、両方の口に何かが注ぎ込まれる込まれる感覚があった。
「んっ……んんっ……んくっ……んふぅっ……んうぅ……!」
 加奈は小刻みに身体を震わせながら、無意識に口の中に注がれたそれを嚥下していった。下腹部からは断続的に熱い液体が流れ込んでくる感覚が伝わってくる。流動的なそれが自分と雄治の接合部からじわりと滲み出てくる感触から、ああ、ゆー君が中で出してくれたんだ、と加奈はやっと現状を認識できた。
 薄っすらと開いた目の前には、まだ雄治の顔――というよりも瞳があった。
 どちらからともなくそっと顔を引くと、お互いの唇の間で唾液の糸がまだ繋がっていた。
「はぁーっ……」
 加奈は久しぶりの外気を思いっきり吸い込んだ。そのまま、背後の雄治にもたれかかる。
 雄治も後ろから加奈を抱きしめるように腕を回しながら、大きく息をついた。
「気持ちよかった?」
「んー……すごく」
 雄治の肌の温もりを楽しむように、加奈は雄治に自分の身体を擦り付けた。
 一方、雄治はというと、今のこいつってまるで猫みたいだなーとかいう感想を抱いていたりする。すると、加奈の髪を撫でながらボーっとしている自分は、縁側で膝元に猫を乗せて寛いでいる老人か。
 それからしばらくして、どちらからともなく動き出す。
「んじゃ……そろそろ帰るとしますかね?」
「ん……そだね」
 加奈は首を捻って雄治を見上げた。多分、自分はもの欲しそうな顔をしてるんだろうなーという自覚はあった。
 雄治は一瞬、きょとんとした顔をしてから苦笑した。
「はいはい……とりあえず、これで最後だぞ」
「うん」
 雄治は加奈の望みどおり、軽くキスをして。
「後は家に帰ってから、だね」
「そーゆーこった」

 体育館の扉から、そっと外の様子を伺うと、空は見事な晴天だった。
「あ、雨上がってるー!」
「家帰ったら、いきなり実力テストの勉強かー」
 だるそうに言う雄治に、加奈がくるっと反転して唇を尖らせる。
「もぉ! 今日ぐらい、そういう事言わないの! 家帰って、いっぱいエッチな事するんだから!」
「うわっ! お、お前、どこで誰が聞いてるか分からないのに、そういう事を大きな声で言うなよ!」
「あ……と、ごめん。ん、と。それじゃ、私から先に帰るね」
「ああ。ところで加奈、お昼何か食べたいものあるか? 帰りにスーパーに寄ってくけど」
 雄治は腹を押さえながら尋ねた。運動、というか何と言うか、身体を動かしたら、雄治の身体は三題欲求のもう一つを訴え始めていたのだ。普段なら、別の一つだったりするのだが。
「いや、あるって言うか……うーん、この場合は何て言うんだろ」
 加奈は頬に指を当てながら、ちょっと考え込むポーズを作った。
「? どうかしたのか?」
「まず、昨日大量に作った晩御飯の残りを処分しないと駄目なんじゃないかなーって思って」
 加奈の言葉に、雄治は思わず怯んだ。
「うっ……そ、そういえば」
「自分で作っといてなんだけど、あれだけの料理を捨てちゃうのって、家計にとても痛いと思うの。やっぱり、出来る限り平らげないとね?」
 あの……スーパー精力増強料理を全部?
「ゆー君、昨日ってあんまり食べてなかったよね?」
「あー、まーな……」
 雄治は力なく頷いた。
 当然だ。
 あんなもんまともに平らげた日には、いくら自分でも理性を保っていられる自信がない。
「今日は、遠慮しないで全部食べてくれていいんだよ? 私も頑張るから♪」
 全部、という部分をやけに強調しながら、加奈はにっこりと微笑んだ。雄治はこの笑顔に弱い。
「……はい」
 雄治は全面降伏の印に、両手を上げて万歳をした。


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