三姉妹は見た!
次女編






高校生になってから、彼女らは別々の部屋を割り当てられた。
ずっと3人同じ部屋で寝てきた姉妹。
長女が高校に入って一人の部屋をもらい、翌年に次女も自分の部屋を割り当てられた……同時に、三女も一人の部屋を持つことになった。
長女と次女の部屋は、壁一つ隔てて隣。
耳を澄ませば隣の部屋の話し声が聞こえる……そんな壁の厚さだった。
そして、その声に気付いたのは、夏から秋に変わろうとしている少し暑い日だった。

(ん……? なんだろう?)
むくりと体を起こした少女。
かすかに聞こえるその声は、聞き覚えのある声だったような気がした。
今は耳を澄ましてみても、その声は聞こえてこなかった。
(お手洗い……行こ)
かすかに差し込む月明かりだけが、少女の部屋を照らしていた。
廊下に出ると少しだけひんやりした空気。
(昼間は暑いけど、夜は少し寒い……)
姉を起こさないよう、足音を忍ばせて、トイレへ向かう。
しかし、その途中であることに気がついた。
少女の耳に、小さく声が聞こえた。
(姉さんの部屋から……?)
そしてその声は、間違いなく隣の姉の部屋から聞こえてくるものだった。
ゆっくりと、ドアに近付く。
盗み聞きをするつもりはなかったが、しかし、真夜中に聞こえる姉の声を、そのまま素通りすることはできなかった。
暑さのためか、少し開かれたドア。
電気がついていないために中は暗い。だが、自分の部屋と同じように姉の部屋もまた、明るい月明かりが照らしていた。
ドアの前に立ったとき、その声ははっきりと聞こえてきた。
「んんっ……はぁん……」
(ね、姉さん……)
間違いなくそれは、姉の声。
それも、淫靡な響きを含んだそれ……
少女にも、その意味は理解できた。
「あん……ああっ……」
姉以外に誰もいる気配はない。
とすれば、これは姉が自らを慰めているのだろう。
一つ、少女は唾を飲み下した。
その音すら聞こえないかと思ったが、姉の声は途絶えることもなく続いていた。
好奇心とは違う何かが、少女を動かした。
少しだけ扉を開き、ベッドの上にある姉の姿を見た。
(ひゃっ……)
危うく声を漏らしそうになった。
月明かりに照らされた、一糸纏わぬ姉の姿。
一心不乱に自分を慰めるその姿は、今まで見たどの姉の姿とも違っていた。
「ふあぁっ……あんっ……」
(……姉さんが、あんな……)
何よりも驚きが先行した。そして次に気付いた、自らの体の変調。
(なんだか……変な感じ……)
姉の痴態を目の当たりにし、少女の思考は体に追いついていなかった。
押さえ切れない性的な興奮……
それが何かもわからないまま、少女は姉と同じように自分の胸に触れた。
「ぁ……」
声が、漏れた。
しかしそれ以上に、体に走った衝撃のことが少女を驚かせた。
(い、一体……なに?)
泣き出してしまいそうだった。
何もかもが理解できず、その場にへたり込みそうになる。
(あ……!)
一瞬、漏らしてしまったのかと考えた。
少女のそこは、濡れていた。
無意識に擦り合わせていたももが、その冷たさを感じさせる。
(嘘、これ、何……?)
力が入らなかった。
もはや自分では立っていられず、少女は床にへたり込みそうになった。
そしてその腕を、何者かが掴んだ。
「きゃあっ!」
「しっ!」
声の主は素早く自分の部屋へと少女を連れ込むと、後ろ手にドアを閉めた。
ほとんど状況をつかめずに床にへたり込んだ少女は、自分を引き込んだ相手を見上げた。
「ね、姉さん……」
そう、それは先ほどまで痴態を晒していた彼女の姉だった。
ベッドの上にいた姿と同じように、一糸纏わぬその姿。そして、秘所の茂みは隠されることもなく、ぬらぬらと光るその姿を晒していた。
「あの、私……ぅむっ!?」
少女が何か言おうとしたその口を、姉の口がふさいだ。
「ん……んふっ、むぅっ……!」
姉と唇を合わせるのは、小さい頃に交わしたおふざけのキス以来だった。
そして、その種類は、少女が今まで体験したことのないものだった。
(し、舌が……!?)
「んっ、んっ……んんっ!!」
少女の口をこじ開け、強引に侵入してくる姉の舌。
それはまるで生き物のように、少女の口の中を動き回った。
「んふっ、んん……」
どれだけ続けただろう。
いつしか少女は、自らの舌を姉のそれに絡ませ始めた。
「んっ……うんっ……」
初めこそ驚いたものの、姉もすぐにそれを受け入れる。
「んっ、んふっ……んん……」
「……んはっ……はんっ、ん……」
月明かりに晒される、少女二人の終わらないキス。
一人は一糸纏わぬ姿。一人は夏用のパジャマ。一見不釣合いな二人が、ただただお互いの唇を求め合うその姿は……それはまるで、ある種の芸術品のような美しさがあった。

「んはぁっ……はぁっ……」
「はぁ……」
どちらからともなく、唇が離れた。
最後の最後まで二つの唇を繋いでいた唾液は、月明かりの下でシルクのように輝き、そして途切れた。
「これで、口止め……ね」
悪戯っぽく笑う姉。
「姉さん……」
少女にとって、何もかもが初めての体験だった。
それは姉にとってもだが……少女がそれを知るのは、もう少し後のことになる。
「……脱いで」
「えっ……」
「濡れてる……でしょ?」
何を指すのかは、瞬時に理解できた。
「うん……」
なぜ姉がそれを見抜いたか、脱いだ後はどうするのか……そんな疑問すら浮かぶこともなく、少女は言われるままにパジャマのズボンを脱いだ。
「上も……」
一瞬戸惑ったが、やはり少女は姉の言うことに従った。
ショーツ1枚の自分。
何も身につけていない姉。
恥ずかしさや戸惑いはもはやなく、ただ現実離れした光景に酔っていた。まるで夢の中にいるような、そんな気分だった。
姉の舌の感触はまだ口に残り、それを思い出すだけで、今まで感じたことのなかった欲求が、彼女の中で大きくなる。
「姉さん……」
姉に何も言われることなく、少女は最後に身につけていた下着を脱いだ。


「そこ、座って……」
ゆっくりとした動作で、姉はベッドを指差した。
コクンとうなずいた少女もまた、音を立てずにベッドへと歩む。
端に腰掛けた少女は、月明かりに照らされる姉の部屋を見た。
自分の部屋と同じくらいの大きさ。同じ部屋だったときに使っていたものもいくつか見られ、妙に懐かしい気分になる。
目の前に立つ姉は、自分と同じように、女性としての特徴がしっかりと表れていた。そしてそれを、こんなに間近に、何も遮る物なく見つめるのはこれが初めてだった。
弱い光に照らされた姉の表情は、優しい笑みを浮かべていた。
非日常……そうとしか表せないこの部屋で、その笑みが自分の姉であることを、少女に実感させた。
「足……開いて」
今までずっと一緒にいた姉に、少女はすべてを預けることができた。


「はぁ……ん……」
ぴちゃぴちゃと、水音が聞こえていた。
「くぅん……ん」
先ほどまで姉がいた場所に、少女がいた。
そして今、姉と同じように押し殺しきれない声を上げていた。
「やぁ……あん……」
丁寧に、丁寧に、妹の秘所を舌でなでる姉。
まるでその音を聞かせるかのように、水音を立てていた。
「入って……ああっ!」
一瞬、少女の体が震えた。
姉の舌が侵入してくるのを、確かに感じていた。
(これ……なに? 変な、感じ……)
今まで感じたことのない刺激。
時間が経つにつれ、確かに湧き上がる……
(姉さんの舌……き、気持ちいい……)
「はぅんっ!」
小さな絶頂が、少女の体を走った。
そして……
「ああ……」
力のコントロールがきかず、姉のほうへ倒れこむ少女。
「……良かった?」
そっと妹の体を抱き止めると、耳元でささやいた。
「うん……」
小さな声で、言葉を交わす姉妹。
そこで初めて、少女はあることに気がついた。
「あの、姉さん……」
「どうしたの……?」
首をかしげる姉。
恥ずかしさで赤く染まる少女の顔は、幸運にも弱い月の光でははっきりと見えなかった。
「お手洗い……行ってもいい?」
その部分に、全く力が入らない。
尿意に対して、少女は全くの無力だった。
「我慢してたの……?」
「うん……」
コクリとうなずく少女を、姉は心配そうに見た。
「立てる……?」
そう言われて立ってみようと試みるが、腰に力が入らなかった。
その様子を見て、姉は一つ息をついた。
「じゃあ、しょうがないか……」
その言葉の意味を理解できず、少女は姉の行動を待った。
そうしているうちにも、迫り来る尿意は確実に大きくなっていた。
そして……
重い音を立てて、それが部屋の真ん中に置かれた。
「嘘……」
姉が置いたものは、部屋の隅にあった観葉植物。
まさかと思い姉を見上げると、姉は静かにうなずいた。
「大丈夫。誰にも言わないから……」
「でも……」
さすがに躊躇した。躊躇したが……
もうすでにそれは、抑え難いほどに大きくなっていた。
姉の手を借りて、ふらふらとそれに歩み寄る少女。そして、意を決し震える両足でそれをまたいだ。
「く、んっ……」
姉の目には、それがほぼ同時に見えた。
少女がそれをまたいでから一秒と待たず、連続した水音が響いてきた。
「はあぁ……」
部屋中に広がるアンモニア臭。
姉の前で放尿するというその行為が、少女をまた興奮させていった。
そしてそれは、姉にしても同じことだった。
妹の姿に気付いて中断した行為……その妹の、あられもない姿。
抑え難いうずきが、ベッドに座る姉の中にあった。
「……んんっ」
どれだけの時間が経っただろう。
少女にとっては永遠とも思える時間が終わった。
最初に放たれてから、次第に勢いをなくしていくまで、姉はベッドから目を離さずにずっと見ていた。
ぶるぶるっと、少女の体が震えた。それは、その行為が終わったことを表していた。
観葉植物の植えられた土の保水力が、少女のそれの量を上回っていた。幸いにも、あふれ出て周りに広がることはない。
葉と幹を少女の尿で濡らし、その植物は暗く輝いていた。
「姉さん、ティッシュ……」
「ん……」
その行為が終わり、後始末も終えると、改めて少女は姉と向き合った。
「今度は、私が……」
まだふらつく体をなんとか立て直し、少女は姉がいるベッドのほうへ歩み寄った。
「うん……」
二人はもう一度、長いキスを交わした。


騒々しい朝が、やって来ていた。
「姉さん、遅刻しちゃう!」
「もう、なんで3人揃って寝坊するのよ! 兄さんは?」
「……とっくに出た」
部屋が分かれてから、困った事があった。
どうしても寝坊が多くなったのだ。
誰かがいれば、お互いを起こして朝の仕度に入れるが、一人で寝起きするとどうしても布団の甘い誘惑に負けてしまうようだ。
「じゃ、行ってきます!」
「ね、姉さん、置いてかないで!」
「早く……」
あの日、あの夜から、特に何も変わったことはない。
あの夜の出来事を、二人とも口に出すことはなかった。
まるで本当に夢だったかのように、少女達の生活に変わりはなかった。ただ、うっすらと思い出されるお互いの唇の感触だけが、あの夜が実在した証明だった。
そしてあの観葉植物は、今も長女の部屋の隅に置かれている。


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