奥様は同級生
分岐部分






1.駄目だ、拒めない。

 少し悩んだ末、雄治は1を選んだ。
 身体の力を抜く。
「え……?」
 雄治がいきなり抵抗をやめたので、逆に加奈の手も止まってしまった。
 雄治は両腕で優しく加奈を抱き締めると、加奈の鼻先に触れるぐらい近くまで顔を寄せた。
「お前さ……」
「な、何……ゆー君……?」
「いや、本当に我慢できないって言うんなら俺もそう。だけど、ここで作ったきまりを破ったら、今後もこんな展開になるのかなって思って」
 そんなものはどうでもいいから本能を優先させる、という選択肢は持ち合わせていない雄治だった。
「かと言って、このままだと勉強に身が入らない。本末転倒もいいところだよな?」
「う、うん……ごめんなさい」
「馬鹿、責めてるんじゃないよ。毎度の事だしな。あー……だから俺としては四日置きぐらいにしたいと思ってるんだけど。さすがに毎日はまずいのは分かってるし」
「ふ、二日……」
 控えめに二本の指を出す加奈。
「……」
 雄治は無言で加奈の後頭部を小突いた。
「痛ぁい……」
 抗議しながらも、どこか加奈は嬉しそうだった。
「はぁ……じゃ、間を取って三日。それならいいだろ?」
「うん!」
 ま、こんなとこだろうな、と雄治は心の中で呟いた。
 目的の数字に持ってくるために、敢えて相手に踏み込んだ数字を告げる。
 そして、相手が渋るのを見計らい、「譲歩」という形で本来の数字を告げる。
 交渉術の基本だった。
「まあ……いつも思ってたんだけど、二週間は長すぎるよな。何事も程々って事で……」
「う、うん……あのさ、ゆー君、そろそろ……」
「ああ、もう待てない?」
「ゆー君が我慢強すぎるんだよぉ……」
 もとより一センチと離れていないお互いの顔だ。
 加奈がほんの少し顔を寄せるだけで、唇が重なり合った。
「んんっ……は……んむ……はふぅ……」
 積極的に舌を求めてくる加奈に、雄治も応える。いくら雄治の理性の方が強いと言っても、身体の方はそうはいかない。自分自身の硬くいきり立ったモノが、加奈の太股の辺りに押し当たっているのはしっかりと自覚していた。
 舌を絡めつつ、加奈の白魚のような指がそっとズボンの中に侵入してくる。しかし、もう雄治はそれをとめようとはしなかった。
「ぁ……ゆー君の……すごく熱くなってる……それにネバネバも沢山……」
 濃厚なキスの余韻で目尻を赤らめながら、加奈の指が雄治のモノに絡み始める。鈴口から溢れ出る腺液で手が汚れるのにも構わず、加奈は雄治のモノをゆっくりとしごき始めた。
「それじゃ……こっちもお返しだ」
 加奈のパジャマの裾から雄治は右手を滑らせ、ブラの生地に包まれた豊かなふくらみに到達する。
「ん、んんっ……」
 生地越しに胸を揉むと、加奈のアゴが可愛らしく仰け反る。雄治は誘われるように加奈の唇を求めた。
「ぅん……」
 加奈もそれに気付いたのか、半開きにした口から熱い吐息を漏らしながら、雄治の唇と重ね合う。お互いの舌と唾液が行き交う音に酔いながら、二人はより激しい刺激を求めようとする。
「ん……んぅっ……!」
 雄治の手がブラを押し上げて、親指で敏感な先端を弄り始めると、加奈は眉に皺を寄せながら喘いだ。しかし、その声も唇を塞がれている状況では、室内に漏れる事は出来ない。
「ふぁ……」
 雄治が顔を引くと、久しぶりの外気が加奈の肺に流れ込んでくる。
 雄治はそっと顔を横にずらすと、加奈の耳元で囁いた。
「もっと、気持ちよくしてやるからな」
「う、うん……お願い……」
 加奈が期待に胸を躍らせていると、雄治の唇が耳朶を挟み込んできた。その途端、弱電流が流れたような刺激が加奈の全身を襲い掛かって来た。
「はぁっ……あっ……あぁっ……ゆ、ゆー君っ……」
 堪えきれず雄治の身体にしがみつく加奈。
 だが、雄治の攻めはまだ終わらず、耳の裏から首筋を舌が幾度も往復する。
 そして、時折思い出したように加奈の唇を求めてくる。
 ゆっくりと、だが確実に口内を蹂躙してくる雄治の舌に、加奈は抗う事は出来ない。次々と送り込まれてくる唾液も、鼻を鳴らしながら飲み下すしかなかった。
「加奈、手が止まってるぞ?」
「はぁ……はぁ……あ……ごめん」
 雄治に指摘され、加奈は雄治のモノを愛撫している自分の手の存在を忘れていた。
「そんなに気持ち良かったか?」
 雄治はおかしそうにクスクスと笑った。
 いつもなら少しは反論しただろうが、今の加奈はコクンと素直に頷くしかなかった。
 実際気持ち良かったのは確かだし、何より久しぶりの雄治の掌の温もりをもっともっと感じたかった。
「じゃ、もうちょっと……」
 雄治は胸を揉みながら、もう一方の手を加奈の背中に回した。
「ん……はぁっ……」
 うっすらと汗ばんだ背筋に沿って指を這わせると、加奈の身体が小刻みに跳ねる。
 そのまま指を走らせ、後ろからパジャマのズボンに指を潜り込ませる。
「はっ……あぁっ……」
 珍しく身体が密着したままの攻めなので、加奈の感じ方がダイレクトに肌に伝わってくる。小動物のように震える加奈を、雄治は思わず抱き締めたい衝動に駆られたが、それを堪えて攻めを継続した。
「あ……ああっ……」
 お尻の谷間を指が滑り、小さな取っ掛かりに触れる。
「ふぁっ……そ、そこは違っ……!」
 加奈が慌てて後ろを振り返る。
「分かってる」
 そこをそのまま通り過ぎると、加奈は明らかにホッとした様子だった。
「まー、あそこは以前も言った通り、後々の課題って事で」
「〜〜〜〜〜っ!!」
 雄治がニヤッと笑うと、加奈は雄治の胸に額を当てて自分の真っ赤な顔を隠した。
「ほら、もっと顔よく見せて」
 加奈は雄治の胸に顔をうずめたまま、ぶんぶんと首を振った。
「やだぁ……」
 ちょっと意地悪しすぎたかなと、雄治は頭を掻こうとしたが……よく考えたら両手とも塞がっていたのでそれは無理だった。
 雄治は加奈の胸に触れていた手を離し、加奈の頭に回した。子供をあやすように長い黒髪を何度も撫でる。
「あー……ほら、悪かったって。な? だから、顔上げてくれよ」
「……反省してる?」
「してますとも」
 でも言った事は守るけどな、と雄治は内心で呟いた。
「それ以上、下向いてるなら俺ももっとすごい事するぞ?」
 雄治の指は会陰部の辺りで止まっていた。それを少しずつ下げていく。
「んっ……!」
 加奈の肩がピクッと震える。
 秘処の周りは既に愛液でべとべとになっており、その秘芯はいとも容易く雄治の指を受け入れた。粘液質の肉襞が雄治の指全体に吸いついて来る。
「んぁっ……」
 その感覚に、ほんの少し加奈のアゴが上がる。その隙を逃さず、雄治はすかさず加奈に顔を寄せ強引に唇を重ねた。
 一瞬、加奈の目が驚きに見開かれるが、すぐに拗ねたような顔で抵抗しようとする。
 だがそれも、雄治に後頭部を押さえられ、同時に挿入された指で蜜壷を掻き回されては力が入らない。徒労に終わってしまう。
 そもそも、キスされた時点で半開きだった口に、雄治の舌を受け入れてしまっていた。まさか噛み切ってしまう訳にもいかないし、雄治の好きにさせるしかなかった。
 加奈はこの時、本気でずるい、と思った。
 その気になればいくらでも加奈の口内を犯す事が出来るのに、雄治の舌使いはとことん優しかったのだ。歯茎や上あごを刺激し、加奈の舌に触れる。緩やかに求めるような動きをしながらも、決して強引に攻めようとはしない。
 加奈は最初はおずおずと、初めての時のように雄治の舌に合わせた。が、次第に大胆に雄治の舌を求め始める。やだ、と心の中では思っていても止まらない。
「ん……んぅっ……んっんっ……んふぅっ……」
 鼻息を荒げながら、キスに没頭する加奈。雄治はひたすら受身で加奈の舌使いに合わせ続けた。
「んぅ……ふぅ……」
 やがて満足したのか、加奈は頬を上気させながら雄治から顔を離した。いつの間にか自分の後頭部を圧迫していた雄治の掌も、緩やかに加奈の髪を撫でる動きに変化していた。
「もういい?」
「ゆー君、ずるい……」
「うん、実はそういう人間なんだよ、俺は。知らなかったか?」
 もちろん加奈は知っていた。
「あー、ほらほら、涎が垂れてるぞ。拭ってやるから大人しくしてろ」
 雄治は加奈の唇の端からアゴにまで伝っている唾液の筋を、自分の指で拭った。
「んっ……」
 加奈は少し身じろぎしながらも、子供のように雄治の成すがままにされた。
 次の雄治の行動と台詞は分かっていた。こういう時の雄治は、加奈の望むものを全て知っているのだ。
 加奈の予想通り、雄治は加奈の頭を自分の胸に収め、右腕で優しく抱き締めながら告げてくれた。
「さて……そろそろかな? 準備はもう、充分過ぎるぐらい出来てるみたいだし」
 雄治の胸に顔を埋めながら、加奈もコクンと頷いた。
「う、うん……頂戴……ゆー君の……私の中に」

 下着ごとズボンを脱いだ加奈は、雄治の上にまたがった。騎乗位の態勢だ。
「ん……よいしょ……」
 加奈は雄治のモノに手を添えると、自分の秘処に押し当てた。
「ふぁっ……」
 雄治の先端が軽く自身の肉びらを開く感触に、加奈は思わず呻いた。雄治のモノに添えている手を濡らすのは、雄治の先走りの液だけではない。加奈自身の内部から溢れ出す愛液が雄治のモノを伝うのが分かった。
 ううっ……は、恥ずかしいよぉ……。
 ゆー君、見えてるんだろうなぁ……見てるんだろうなぁ……。
 そう思うと、加奈の白い肌が自然、羞恥の色に変わる。だが、体内の熱い昂ぶりを押さえる事は出来ない。
「んっ……」
 恥ずかしいのを堪えながら、ゆっくりと腰を下ろしていく。
「あ……ん、んんっ……」
 いつもより遥かに熱く固い雄治のモノが、加奈の内部を満たして来る。下半身に力が入らず、重力に負けるように少しずつ加奈の蜜液に潤った秘壷は易々と雄治のモノを飲みこんでいった。
「ん……はぁ……」
 根元まで沈み込んだ所で、加奈は小さく息を吐き出した。
 雄治の胸板に両手をつき、しばし呼吸を整える。
「俺が動こうか?」
「ううん……私が動くよ。我侭言ったの、私の方だしね」
 別にそんな事、気にしなくてもいいんだけどなぁ……と、少し思う雄治だった。
「ん……。それじゃ、頼む」
「うん……」
 加奈は頷くと、慎重に腰を持ち上げ始めた。加奈の秘裂から、愛液にまみれた雄治のモノが姿を現し始める。
「んっ……はあぁっ……」
 雄治が加奈のパジャマのボタンを外すと、先刻の愛撫でブラを押し上げられた加奈の胸が露わになる。
「何か……上だけ着たままって、妙にえっちぃな?」
「ん……そうかな? じゃあ、脱ぐ?」
 首を傾げる加奈の言葉に、雄治は首を横に振った。
「えっちぃのは、そのままでよし」
 告げると、加奈の胸に両手を添えて、指ですっかり敏感になっている乳首を弄んだ。
 その感覚に、加奈の身体がビクッと跳ねる。
「あっ……ああっ……ゆ、ゆー君……そんないきなり……!」
「じゃあ、これぐらい?」
 手で緩やかに加奈の胸を揉みながら、雄治も少しずつ加奈の腰の動きに合わせる。
「ん……うんっ……それぐらいなら……」
 二人の息が合わさるに連れ、腰の動きは次第に強く激しい物へと変わっていく。
「んくっ……ん……んんっ……ふぁっ……あっ……あんっ」
「お、おい、加奈。いつもより激しくないか?」
「は……あっ……ゆー君の……いつもよりおっきいから我慢できないよ……」
「ん……別に我慢しなくていいぞ。いくらでも付き合ってやるからな」
「んっ……うんっ……でも明日の試験が……」
 さすがの雄治も呆れた。
「……いや、お前ね、この時点で今更試験の心配をするか?」
 まあ、こいつらしいといえば、そうだが。
「やるべき事は全部やったんだし大丈夫だよ。そんな一日や二日で忘れるような勉強してないだろ?」
「う、うん……そ……だけど……はっ、あん……頭の中が真っ白で……あっ、や……も、もぉ……私……」
 雄治は加奈の胸を撫で回していた手を脇に移動させ、加奈の上体を自分に引き寄せた。
 二人の身体が繋がったまま、密着する。
「え……」
 加奈が戸惑い、我に返るより前に雄治は加奈の唇を吸った。
「ん……んんっ……!?」
 加奈は驚きに目を見開くが、すぐに力を抜いて雄治に合わせ始める。
 雄治は加奈の黒髪を撫でながらも、激しく加奈の中を貫き続ける。
 先刻までの騎乗位では加奈の方が動きのリードが出来たが、この状態では雄治の方が動きやすい。
 無論、加奈の方も動きを休める訳ではなく、雄治の激しい動きに自分の動きを合わせようとする。
「ふぅ……ん……んくっ……ん、んんっ……」
 加奈は鼻息を荒げながら、両腕を雄治の首に絡め、しがみ付いてくる。
 唇を重ねあったまま、雄治は腰の動きを早くし、加奈をさらなる高みへと導く。
「ん……んむ……はぁ……あむ……んんっ!」
 加奈の下半身がガクガクと痙攣を始め、雄治に限界を伝えた。
 雄治は一際強く加奈の中を抉りながら、自分の舌に乗せて再び加奈の口内に唾液を流し込んだ。
「ん、んんぅっ……!」
 ごくり、と加奈は喉を鳴らすと同時に、雄治にしがみ付いていた腕により一層力を込めながら絶頂を迎えた。
「ふぅ! ん! ん! んうぅ……!」
 雄治は腰の動きを止めたまま、加奈の舌と自分の舌を絡ませ合った。
 そして、ひとしきり加奈の口内を弄り尽くすと、顔を引いた。
「ん……ふぁっ……?」
 唐突な雄治の行動に、加奈はどこか呆けた顔のまま小さく首を傾げる。絶頂の余韻からか、頬を赤らめ目は潤んでいた。
 雄治は軽く、加奈の額に自分の額を合わせた。
「お前ね……頼むから、こういう行為の最中に無粋な事言うのはやめとけ。ほんと、大丈夫だからさ。まだ数式ちゃんと覚えてるだろ?」
「あ……う、うん」
「だーいたい、自分から迫っといてそういう事言うか、普通? 先に心配してたのは、俺の方だろうが」
「ん……ごめんなさい……」
「はー……さて」
 雄治は一度大きく息を吐き出すと、加奈の身体に腕を回したまま身体を起こした。
「え……あっ」
 加奈も一瞬驚いた顔をしたが、すぐに悟ったらしい。自分を貫いている雄治のモノが、いまだに堅く元気なままでいる事に。雄治はまだ射精していなかった。
 雄治は珠のような汗をかいた加奈の背中に指を這わせ、それを下ろして行く。
「ん、はあぁぁっ!」
 背中から伝わってくるゾクゾクとした微弱電流のような刺激に、加奈も強く雄治にしがみ付いて来た。
「あ、はあぁぁ……」
 熱い吐息を漏らしながら快感をやり過ごそうとする加奈の顔が、雄治のすぐ間近にあった。
「こういう時の加奈の顔って可愛いよな、やっぱり」
「は……あ……それじゃ、普段の私は……?」
「それとは別種の、って意味だよ。何を今更言わせるかな」
 笑いながら、雄治は加奈に顔を寄せる。
「あ……ん……ふぅ……」
 軽く唇を重ねてから、雄治はすぐに顔を離した。
「動くぞ、加奈?」
 告げてから、加奈のお尻に両手を伸ばし、彼女の身体を固定する。
「ん……うん……いいよ。ゆー君の好きなように動いて……」
 加奈が頷くのを確認してから、雄治は両腕に力を込めて加奈の身体を持ち上げた。
「ん……あ……はあぁっ……」
 加奈の秘処に突き刺さった太い杭が愛液を滴らせながら引き抜かれていく。
 ズルズル……という感じに先端近くまで引き抜かれたそれで、雄治は再び加奈の最奥を強く貫いた。
「ふあぁっ!」
 たまらず加奈がぎゅっと雄治にしがみついてくる。
 雄治は腰を揺らしながら余裕が出た来たのか、片手で加奈の髪を撫で始める。髪だけではなく、背中や首筋、時おり加奈の後頭部に手をやってキスを交わす。加奈も拒むことなく、雄治の舌に自分の舌を絡めてくる。
「はっ……んむっ……あんっ……はぁっ……」
 雄治は腰を動かすたびに、胸板に硬く尖った二つの突起が擦れるのを気づいていた。
「こっちでも気持ちいいか?」
 文字通り、鼻先が触れ合う距離で雄治は加奈に尋ねた。
「あっ……う、うん……気持ちいいのぉ……は……ぁ、あんっ……」
 涙目で何度も頷きながら、またしがみついて来る加奈。いつもの事だ。H無しの時ですら、加奈は雄治にしがみついて来る。それも熟睡のまま。
「加奈も動く?」
「うん……動くぅ……」
 雄治にしがみ付きながら、加奈も雄治の動きに腰を合わせてくる。強く雄治に抱き付いたままなので、激しくは動けない。しかし雄治にはそれでも充分気持ち良さは伝わってきていたし、何より加奈が動いてくれているというその事自体が雄治に快感と喜びを伝えてくれていた。
「ん……はぁ……気持ちいい、ゆー君?」
「ああ、すごく……でも、動きにくくないか、それ?」
「ふぁっ……あんっ……でも私、このままの方がいいから……」
 さいですか、と頷き雄治はさらに腰の動きを早めた。
 何度も強くお互いの腰を打ち付け合い、接合部から溢れる愛液は滴となってシーツに大きな染みを作っていく。
 一方、潤った肉襞を亀頭でこそげ取るようにしながら、雄治の怒張が自分の最奥を繰り返し貫く感覚に、加奈は翻弄されつづけていた。子宮を突き上げられるたびに、加奈の頭は真っ白な閃光が走りどうにかなってしまいそうになる。ついさっき絶頂を迎えたばかりの身体は過剰なほど敏感で、体の奥から湧き出てくる快楽は蜜液となってとめどなく溢れ出る。加奈はもう数え切れないほど雄治と肌を合わせているにも関わらず、接合部から耳にまで届いてくる淫らな水音にいまだに慣れないでいた。自分がすごくHな子のようで、いつも恥ずかしくなる。雄治は、そう言う加奈の表情がすごく好きだ、と以前言ってくれた事があるのだが、見られるとそれはそれでまた恥ずかしい。
「はぁ……あ……ぅんっ……」
 不安になって加奈は朦朧としながらも雄治の顔を見た。
 すると、やっぱり雄治は自分の顔を見ていたので、加奈は自分の顔がボッと火が付いたように赤くなるのを自覚した。
「こういう時の加奈の顔って可愛いよな、やっぱり」
 さっきの雄治の言葉を思い出す。
「うー……」
 嬉しいけど、加奈としてはどう返事していいか分からなかった。せいぜい雄治の肩に自分のあごを乗せて、顔を逸らすぐらいしか出来ない。
 そんな加奈の仕草に、雄治はつい笑ってしまう。艶やかな長い黒髪に手を往復させながら、加奈の耳に口を寄せる。
「ん……そろそろいくぞ、加奈」
「んぅ……うん」
 髪を撫でる雄治の手の感触が心地よく、まどろむような返事になってしまう。
 雄治はそっと身体の位置を変えると、加奈の顔が自分の真正面に来るようにした。
「あっ……ゃだぁ……」
「これならよく見える」
 雄治はニヤッと笑うと、腰の律動を再開した。今までよりもずっと早く、強く加奈を貫く。
「あっ……んんっ……はっ……はぁんっ……」
 加奈も雄治の首に腕を絡めたまま、雄治の動きに合わせる、本当はしがみ付きたい所なのだが、そうすると雄治から自分の顔が見えにくくなる。感じている時の自分の顔を見られるのは恥ずかしかったが、嫌という訳ではなかった。
 それにこの位置なら。
 加奈は顔を上げ、自分から雄治の顔に寄せた。
「んむっ……」
 雄治は少し驚いた顔をしながらも、加奈に唇を許した。
「むぅ……は……あんぅ……」
 下から何度も襲い掛かってくる快感に耐えながら、加奈は貪るように雄治の舌を舐め、吸い、絡めた。
「ん……ふぁ……やっぱり……」
「……何だ?」
 加奈は小さく首を振った。
「ふぅっ……はぁ……な、何でもない……」
 まさか、キスがしやすいなどとは言える訳がない。
「うん、だろうな」
 雄治は頷き、今度は自分から加奈にキスして来た。
「……んぅっ!?」
 完全に不意を打たれた加奈は、自分の口内に侵入してきた舌にもなす術がなかった。大量に送り込まれてくる唾液も、喉を鳴らして飲み下すしかない。
「はっ……あっ……ず、ずるいっ……ゆー君……」
「甘いな。……んっ……お前の事で分からない事なんて、あると思ってたか?」
 そう、雄治には加奈の考えることなどお見通しなのだった。しかし雄治も限界が近いのか、一見余裕を装いながらその声は少々上ずっていた。
「ん……は……あぁっ……いいよ……私も、もぉ……限界っ……」
「ああ……」
 さらに激しく加奈を突き上げながら、雄治は加奈の中の締め付けがきつくなって来ているのを感じていた。
「だ、駄目っ! あっ、ああっ……ふあぁんっ!」
 たまらず加奈はギュッと雄治に抱き付いた。
 加奈の膣内が急速に収縮を開始する。ほぼ同時に雄治は、加奈の最奥を抉るように強い突きを送りこんだ。
「あ、あっ、ふああぁぁーーーっ!!」
 雄治の腕の中で、加奈の身体がビクンッと大きく仰け反った。
「っ!」
 雄治も加奈の身体を抱きしめ、これまで堪えに堪えていたものを一気に解放する。根元深くまで埋めこまれた雄治のモノの先端から、灼熱の溶岩が噴出された。
「ん、ああっ!」
 加奈は身を震わせながら、自分の体内で雄治の熱い体液が広がって行くのを感じていた。普段の何倍も多い大量の白濁液が子宮に浴びせ掛けられる。
「は……あ……ゆ、ゆー君……」
 小刻みに震える加奈の背中を撫でながら、雄治は後ろに倒れた。
「あ……」
 雄治に抱きしめられたままの加奈も、当然のように雄治にのしかかる形でベッドに倒れこむ。
「え、えっと……」
 加奈と繋がったままの雄治のモノは、一度欲望を吐き出し、やや柔らかくはなったものの、まだその存在を強く主張していた。
「あのさ……加奈?」
 加奈の顔のすぐ横で声がした。
「は、はい?」
 加奈が顔を上げると、雄治が考えるように頬を掻いていた。雄治には珍しく、どこか照れたような表情だった。
「……?」
 加奈は首を傾げながらも雄治の言葉を待った。しばらくして、ようやく雄治が口を開く。
「もう一回戦、行けるか? その……もうちょっとしたいんだけど」
 加奈は目を瞬かせ、雄治の言葉を頭の中で反芻した。ゆっくりとその意味が脳裏に浸透してくる。
 もう一回? 『あの』ゆー君が?
 加奈は、てっきり雄治の事だから「明日の試験に差し支えるから」とか言うと思っていた。
 いや、でも、しかし。
「あの……加奈さん? お返事は?」
 嬉しかった。
 無論、加奈の中に『駄目』などと言う選択肢はない。
 思わず、ベッドのスプリングが軋むほど強く雄治を抱きしめてしまう。
「って、うぉわっ!? か、加奈!?」
 加奈は身を起こすと、雄治の顔を両手で挟んでキスした。
「いいに決まってるよ、私達ふーふなんだから♪」


 ドンドンドン……。
「んぁ……?」
 耳に届くかすかな音に、雄治は目をこすりながら身を起こした。
 ドンドンドンッ!
「おとーさん、おかーさんっ、ちこくだよーっ!」
 激しく叩かれる扉の向こうで、夕奈が叫んでいた。
「……遅刻?」
 横を見ると、裸の身体をシーツに包んだ加奈が気持ち良さそうにスヤスヤと眠っていた。まだ薄ぼんやりとした思考で、時計を見る。
 午前七時半。
 それに、窓の外から何やら不吉な音。
「やばいっ!」
 雄治はカーテンを勢いよく開いた。案の定、外は雨だった。
「おとーさんってばーっ! おかーさーんっ!」
 雄治は慌てて加奈の肩を揺さぶった。
「おい加奈、起きろ! 遅刻するぞ!」
「んぅ……何? ゆー君……おはよ」
「おはよーじゃないって! お前、もう家出ないと遅刻するぞ! ほら、外見てみろ! かなり降ってるぞ!?」
「え……? うわっ、た、大変ーっ!」
「おとーさんってばーっ!」
 扉の向こうでは、しきりに夕奈が扉を叩いていた。
 いい加減焦れてきたのか、叩く位置が下がってきた。つまり蹴っているのだ。
「わ、分かった! 今開けるから蹴るんじゃない……って、駄目だっ! 加奈、まず窓開けろ! この臭いはやばい! 部屋の換気! それと服着て!」
「う、うん!って、ゆー君もせめてズボンぐらい履いてーっ!」


 えーと……結局何回したんだ?
 幸いな事に遅刻は免れた雄治は、シャーペンで自分の額を叩きつつ考えた。
 目の前のテスト用紙には、頭に浮かぶ答えをスラスラと書き込んでいきながら、別の思考に没頭する。
 あれから確か、正常位と後背位と背面座位と……それからもう一回正常位やって、後始末ん時に成り行きでシックスナインになってもう一回出したから……六回。
 自分の元気の良さに思わず呆れる。
 道理で腰が痛いはずだ。
「はぁ……」
 雄治は軽く腰を叩きながら、溜息をついた。
 腹が鳴っているのは朝食を食べていないせいだ。
 夕奈だけは、隣の家に住む姉代わりの相馬のどかに預けてきたから、ちゃんと食べているだろうけど。
 問題はのどかの方がまだ寝起きで眠そうだった点にある。
 ……あとで夕奈に叩き起こされてなければいいけど、のどか姉ちゃん。
 おまけにバスにまで加奈と一緒に乗る羽目になるとは。
 顔見知りに見られてないか、少し不安だった。
 まあ、偶然を装った風をしていたから大丈夫だとは思うが。
 そんなこんなで心配事は山積みだった。
 まだ余っているテストの空欄を手早く埋め、机に突っ伏す。
「ぐぅ……」
 雄治が居眠りをするのはいつもの事なので、クラスの誰も驚かなかった。
 ただ。
 いつもと違って完璧なまでの熟睡ぶりだった。
 そう感じたのは、クラスでも勘の良い数人だけだった。

「ふぁ……」
 雄治が机に突っ伏すのとほぼ同時間、加奈も小さく欠伸をした。
 眠気に抗いながら、まだ残っているテスト用紙の空欄を埋めようとするが、どうしても集中出来ない。
 ええと、結局昨日は何回したんだっけ。
 よく覚えて無いけど、六回ぐらいしたような気がする。自分がイッた回数は軽く二桁。自分の貪欲さに思わず呆れる。
 うぅっ……私ってやっぱりエッチなのかなぁ……。
「何を今更言うかね、お前は」って言う、ゆー君の苦笑した顔が目に浮かぶようだった。
 あう……実はゆー君の言ってた通り、数式はよく覚えてるんだよね。
 どうやら、エッチしてる最中にも忘れちゃ駄目だからって、頭の片隅で唱えていたらしい。
 ただ、それを思い出そうとするたびに、昨日(半分は今日)の雄治との行為までリアルに回想出来てしまうのが困り物だった。
 今の加奈の頭の中は、いわゆる刷り込み状態にあった。
 とはいえ、数式を思い出さなければ答えは解けない。
「ふえぇ……一体どうすればいいのよぅ」
 呟きながらも、答えは決まっていた。
 問題5の数式は……うわあぁぁ。
 加奈の脳裏に、四回目、背面座位で耳を攻められながら貫かれていた時の光景が、鮮明にフラッシュバックしていた。
 加奈は昨晩の情事の回想に顔を真っ赤にしながら、問題を解いていくしかなかった。


 そして数日後の高科家。
 夕食を終え、雄治と加奈はいつものようにテーブルで顔を突き合わせていた。その表情は深刻そのものだが、夕奈が見ているテレビアニメの音楽のせいでどこか間の抜けた雰囲気だった。
「……思ったんだけど」
 口火を切った加奈の言葉に、雄治も頷いた。
「ああ、俺も」
「我慢は身体の毒だよね」
「まったくだ」
 テーブルの上には、返却されて来た試験の答案用紙が置いてあった。
 加奈はいつも通りの好成績。
 問題は、雄治の方にあった。
 英語U100点。
 数学100点。
 化学100点。
 試験最終日の答案用紙である。
 雄治は苦い顔をしながら舌打ちした。
「気を抜くと、すぐこれだ」
「うん、大変だよね。まさか、カンニング疑惑事件にまで発展しちゃうなんて思わなかったけど」
 加奈もため息をつきながら頷いた。
「まー、普段が普段だからな。無理もないけど」
 雄治の普段の平均点は40〜50点。赤点をとるか取らないかの瀬戸際で、いつも追試を免れている。
 こういう家庭の事情だし、目立った事はしたくないのだ。
 それに普段弛緩した顔をしているから中々気付かれないが、奥さんという欲目を引いても雄治は中々格好いいのだ。下手にもてられても困る。いや、絶対もてる、と加奈は確信していた。これは雄治に言わせると「過大評価しすぎ」と苦笑される事になるのだが、加奈は本気で信じていた。
 そして、雄治が浮気するとは絶対思わないが、むしろ自分がやきもちを焼いて何をしでかすか分からない方が不安だった。
「どうするの?」
「どうしようもないだろ。俺は普通に問題を解いて、答案用紙を提出しただけだし……この場合、その普通が問題か」
「うん。本気になったゆー君がいかにすごいかは知ってるつもりだけど。ねえ、いっその事このまま卒業まで学年トップをキープするってのはどうかな」
「めんどくさいからやだ」
 雄治はテーブルに突っ伏した。
 ま、本音は分かってるから口にしないけどね、と加奈は天井を見ながら心の中で呟いた。


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