保健室の二人






 青海高校保健室。
 ガラリと扉が開いたので、剣道着姿の前田宏行はベッドから身体を起こした。
「おっじゃましまーす。前田ぁ、だいじょぶ? 見舞いに来たよ」
 元気よくぶんぶんと手を振ってベッドに近寄ってくる体操着姿のポニーテール娘は、『一応』前田宏行の彼女という事になっている後藤和泉だった。クラスメイトでもある。
「……おう。中々いいボールだった」
 宏行は後頭部をさすった。まだ痛む。
「でしょ?」
 和泉はベッドの脇に腰掛けた。
「何で陸上部のお前がサッカーボール蹴ってたのか気になる所だが」
「ああ、あれ。女子サッカー同好会って、会員少ないから助っ人なの。今日、うちの顧問休みだったし」
「そりゃあれだ。七草公園で、なんか乱闘らしいのがあって、みんなそっちの方に行ってるらしい」
「へえ」
 座ったばかりだというのに、和泉は再び立ち上がった。
 そのまま、扉に向かう。
「何で知ってるの?」
「早乙女先生に、留守番頼まれた。そういう事で、戻ってくるまでは俺一人」
「どれぐらいで戻って来ると思う?」
 一度扉を開き、廊下の左右を確認。
 誰もいないのににんまりして、扉を閉めた。
「今さっき出て行ったばかりだし、人数も多いらしいから……って、何で鍵掛けてるんだ、お前はっ!」
 意に介せずベッドの脇に立つと、和泉は上履きを脱いだ。
「前田♪」
 そのまま、ベッドにダイビングをかます。
 しかし剣道部で鍛えた宏行の身体は、軽量級の和泉の身体を支える事ぐらいは訳はない。
「お、お前な、ここ学校だぞ?」
 よいしょ、と声を上げながら、和泉は上体を起こした宏行と目線を合わせた。
 宏行は太股の辺りに、柔らかく温かな感触を感じた。和泉のお尻がそこに体重を預けるように乗っているのだ。
「学校だから燃えるとは思わない?」
「ばれたらまずいとか、そういう考えはないのか?」
 落ち着かず、宏行はわずかに身動ぎした。
「だから鍵掛けたんでしょ?」
 ズイ、と和泉が身を乗り出す。必然的に、宏行は後退する。
「う……」
「けど、保健室でのえっちは定番として外せないと思うんだけど」
 ズズズイ。
「思わない」
 後退しながら反論。
「教室は、その気になればいつでも出来るけど、ここはいつも早乙女センセがいるから、なかなか……という訳で、絶好の機会なのですよ、旦那」
 そもそも太股を和泉のお尻で固定されているのだから、後退にも限度がある。
 完全に仰向けになった宏行の、頭の両側に和泉の手が置かれた。
「何が旦那だ! お、お前さては最初から――」
「実は、一年の子と学校を出て行く早乙女先生には、さっき廊下であったもん。そっか、乱闘騒ぎかー。じゃ、結構掛かるね」
 コツン、と和泉はデコを当ててくる。お互いの息が当たる距離だ。
 将棋で言えば詰めだな、と宏行は思った。
 敗因は、間近にある和泉の顔と、運動直後の汗と彼女自身の香りか。
「これ、後始末はどうする気だ……?」
 顔を傾け、宏行は和泉にキスした。
 ついばむようなキスを二、三度繰り返してから、和泉がわずかに顔を上げる。
「んっ……ばれないようにしようね、うん。前田のテクニックなら大丈夫よ」
「変な保証をするなっ!」


「ん…ぅ……ねえ……前田ぁ……」
 唾液の音を鳴らしながら、向こう側から声が聞こえてきたので、宏行は舌での愛撫をやめ、微かに潤み開いた秘唇へ指を挿入した。
 微かに和泉が身体を震わせる。上着とブラをずらされ、パンティもブルマーごと右の足首に引っ掛かっている。それが今の彼女の格好だ。
「あ?」
 クッと下の布地が引っ張られた。
「んくっ…ふむっ……これって……ん、んん……袴プレイに入るのかな」
 指で内粘膜を掻き回すと、和泉の身体は敏感に反応し、彼女の奉仕はより一層熱心になった。竿を包み込むように指が上下し、亀頭に柔らかな舌の感触を感じる。
「はか……いや、お前な。野郎の袴姿で欲情する奴がどこにいる?」
「女の子なら……はぁ…いいの?」
 和泉は鈴口に溜まった先走りの液を舐め取ると、宏行のモノをゆっくりと咥え始めた。
「……………………悪くないかもしれない」
「うー、こっちだって……一応…ん……ふくっ……体操着にブルマなのよ?」
「これが駄目とは言ってないんだが……」
 手で扱きながら、和泉は宏行のモノを中程まで咥え、再び頭を上げる。和泉の膣内とはまた異なる、吸い上げる刺激に宏行は軽く呻いた。
 下半身から込み上げて来る快感に酔いながら、和泉の秘処へもお返しとばかりに刺激を送る。
 指を前後させる度に、粘液質の音を立てながら愛液が溢れ出す。指はおろか、彼女の太股にまで滴り始めていた。シーツを汚すとまずいので、舌で舐め取る。
「あ、あっ……あのさっ……じゃあ、メ、メイド服とか、好き?」
 今のがツボだったのか、声を震わせながら和泉が尋ねてくる。
「……好きか嫌いかというレベルじゃなく、考えた事がないんだが」
「バニー……っ…さん」
「あんまり好きじゃない」
 いかにも風俗っていうのは、なんだか苦手だった。まあ、試してみたくない事もないけれど。
「じゃあ…ん…んくっ……メイド服……ふぁ……用意しとく」
「いや、だから……分かった。頑張れ」
「ん……は……あ……う、うんっ!」
 宏行が和泉の蜜壷から指を抜くと、股間と指を細い糸が引いた。
「ちょ……ま、前田……?」
 唐突に訪れた股間の涼しさに、和泉が焦った表情で振り返った。
「お前、どうやら…シチュエーションで燃えるタイプらしいな……。ほら……」
 和泉の尻を両手で開くと、つられて秘唇もかすかに開く。ピンク色の粘膜から、透明な雫が次から次へと溢れ出てきた。
「っあ……ゃ……ひ、広げちゃ駄目だって……ひんっ!」
 和泉の身体がビクンッと震えた。
 宏行が、彼女のお尻を大きく開いたまま、愛液を舐め取るように這わせたのだ。
「声を上げちゃ…んっ……まずいん…じゃなかったか? 口が……留守だぞ」
「ほ、本性が現れたぁ……前田の鬼畜ぅ……」
 和泉は一生懸命に宏行のモノを舐めるが、一度ついたアドバンテージはそうそう取り返せるものじゃない。
 わざと音を立てながら蜜を啜り、淫核を唇で挟み吸うと、和泉の身体は敏感に反応を示し続けた。
「そうか……鬼畜は嫌いか。なら…ここで……ん…やめるか」
「あ……あぁっ……やだぁ……」
 和泉がぶんぶんと首を振った。もはや、愛撫どころではないのだろう。宏行のモノを手で包み込んだまま、ぜいぜいと喘ぐしか出来ない様子だった。
 しかし、宏行は舌での愛撫を中断した。
「あ……い、意地悪ぅ……っ!」
「違う」
 そのまま尻を掲げ持ち、和泉の体を反転させた。
「あ……」
 コテン、と和泉の上体が突っ伏し、宏行の眼前に来る。
 愛液に濡れた指先を上気した顔に突きつけると、ごく当たり前に和泉はそれに舌を伸ばした。
「じゃ、今日はお前が上な」
「はぁ……はぁ……ん……ふくっ……な、何で?」
 宏行は和泉に指をしゃぶらせながら、ポリ、と髪を汚れていない方の指で掻いた。
「他の体位だと、シーツが汚れるから」

「あの、後藤さんや」
 間近で喘ぐ和泉に、宏行は尋ねた。
「ん……あ……な、何?」
 宏行の命じた通り、騎乗位の格好で自身を何度も貫きながら、和泉は首を傾げた。
 
「俺、ひじょーに動き難いのですが」
 首には和泉の腕を回され、抱き合った状態での結合。胸を揉もうにも隙間がないし、腰も動かしにくい。
「はっ……あんっ……さっきまで…あっ…あぅっ……前田が攻めてたから、今度はわたしの番……んんっ…ってのは、駄目…?」
「駄目……というか、単純にお前が負けてただけのような気が。ぬぅ、揉みにくい」
 胸を諦め、背中に手を回す。浮き出ている汗をローション代わりに、背中を往復させる。
「密着してる…もんね……んん…けど、これは…あんっ…これで胸板に擦れて、いい感じなの……」
「突き上げと、首から上ぐらいしか攻めれん……」
 言いながら、大きく腰を突き上げると、和泉は唇を尖らせた。
「だぁから、今はわたしが攻める番なんだってばぁ……」
 宏行の首筋に舌を這わせる。キスマークは宏行の拳骨が待っている(一回やられた)ので、付けられない。
「をっ……」
「ん……ちょっとしょっぱい……」
「まあ、部活中だったしな……」
 何度も首筋を舐め、耳も責める。宏行の身体が反応すると、和泉は嬉しそうにさらに愛撫に没頭しながら、大胆に腰を動かした。立った乳首が宏行の厚い胸板で擦られ、深い貫きが一番奥をノックするたびに、滲み出るような快感が和泉の全身を支配していた。
 動ける範囲内で限界まで引き抜き、一気に貫く。
「で……あ……みんなが…ぁん……ん! んっ、んっ……くぅんっ! 運動に精を出してる間に……は……ぁ……わたし達はこういう…あっ…あんっ……不埒な事をしている、と……はぁ」
 和泉に責めたてられ、宏行にも余裕がない。可能なレベルで突き上げ、背中を愛撫している方とは別の、もう一方の手を愛液まみれの接合部に這わせた。
「あ――――」
 一瞬、和泉の頭の中が真っ白になり、息が詰まった。
 宏行の指が一瞬止まった。そのせいで、和泉は絶頂寸前で踏みとどまる事となった。
 絶妙の間合いで宏行が指を再び動かした。
 接合部から会陰部、菊座に掛けて撫でられると、もうたまらなかった。麻薬にも似た快感に突き動かされながら、さらなる刺激を求めていっそう腰の動きを強めた。
「元凶は……お前だ、お前……」
「共犯♪ ……んっ」
 宏行は、侵入して来た和泉の舌に自身の舌を絡め、吸った。互いの口腔を行き来しながら、送られて来た唾液を飲み下す。
「くっ……否定……っ…出来ないのが悔しいな。他の奴が……見舞いに来たら…どうするんだ」
 息継ぎしてから、お返しとばかりに、今度は逆にこちらからも大量の唾液を和泉の口内に流し込む。和泉は喉を動かしながら、それを啜り飲む。
「あは……そこまで…考え、てなかった……ふぁ……そういえば……ぁ…ん、んんっ……わたしもっ……部活中だったし……」
 宏行の唇を舌で舐め取りながら、和泉は笑った。
 宏行は宏行で、引き攣った笑みを浮かべながら視線を保健室の扉に流す。
「よかったな……後藤。お前の……望み通り、スリル満点だ」
「あ……声…に諦めが…う…くっ……滲み出てる。じゃあ……あ、あっ……ここでやめる……んぅっ!?」
 唇を尖らせる和泉に、宏行は強引に口付けた。閉ざされた唇を舌で突付き、微かに出来た隙間から侵入を果たすと、犯す様に口内を蹂躙する。
「ん…っ……んむっ……んくっ……ぅん……」
 息苦しくなり、宏行は唇を離した。
「ぜはぁーっ……声…上ずらせて何……言ってんだか」
「やだぁ……前田……もっとぉ……」
 和泉のおねだりに、宏行は行動で返した。
「ここまで来たら……最後までやる。ああ、後、俺んち……今日は帰り遅い筈だからな」
「は…ぁ……それは…お誘いですか……前田君?」
「お嫌…ですか……後藤さん」
 前田の問いに、和泉は少し考え込んだ。
「あ……でもそっちに直で行くとメイド服持っていけない」
「それに拘るなっ! つーか、家に本当にあるのか!?」
「楽しみにしててねー……という訳で、そろそろこっちに集中、しよ?」
 和泉が再び激しく腰を動かし始める。一度絶頂寸前にまで追いやられた身体は、すぐに再燃し、和泉を激しく昂ぶらせる。
「次の課題は、腰の動かし方だな……」
 省みながら、宏行も下から激しく粘膜を貫く。
「この前まで……童貞だった男が何を贅沢…んっ…はぁっ……言ってんのよ」
「……この前まで処女だった女がえらそーに。下手なより…は……いいだろ?」
 息をぴったり合わせながら、限界まで引き抜かれた宏行のモノが愛液に潤んだ肉襞を掻き分け、一気に根元まで埋没する。
 その度に、和泉の頭の中は真っ白になり、熱い吐息を吐きながら喘ぎ続ける。しかしやめることは出来ない。激しい結合を繰り返しながら、和泉は高みに昇り詰めようとしていた。
「責められっ放しってのは……や…ぁああっ! ぞ、ぞくぞくする……苦手だもん……っ!」
 激しく上下を繰り返す接合部に、宏行は指での愛撫を繰り返す。
 和泉の喘ぎが断続的になり、急速に膣内が収縮を開始した。
 その締め付けに、宏行も限界を迎えた。
「奉仕の精神が、あるのは……大いに結構。今度のメイド姿の時に発揮してくれ……んっ」
 最後の突き上げと共に、宏行は和泉の最奥に最初の白濁液を放った。
「は……あ……ん、は、ああぁ……あ、う、んんんっ!」
 同時に和泉も宏行の方に口を押し付けながら、小刻みに身体を震わせて絶頂に達した。胎内に宏行の精液が送り込まれるたびに、和泉の身体はビクッビクッと、絶頂の余韻に震えた。


「……どう?」
 背後から、身なりを整え終わった和泉が声を掛けて来た。
 同じく剣道着に着替えを完了している宏行は、つぶさにベッドを観察し終えた。
「シーツは問題ない。……けど」
「けど?」
 宏行の肩に顎を乗っけてきながら、和泉が問い掛けた。
 ため息をつく。
「少なくとも、俺は今日は部活には出れない」
「何で?」
 宏行は、自信の袴をつまんだ。
「袴に妙な染みを付けたまま、部活に出れるかっ!」
 今でこそ和泉が背後にいるので見えないが、そこには大きな地図が出来ているのだ。こんな格好で部活に出たら、絶対問い質されるに決まっている。
「大丈夫。メイドさんは、洗濯もお仕事って事で」
「まだそのネタ振るか、お前はーっ!」



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