Six in One






●All View
 襖が静かに開かれる。
 目を瞑っていても、その視線は感じられる。
 顔には照らされないが、確かな灯りが部屋を巡った。
「……………………ここは、問題なし」
 ごめんなさい、問題大有りです。
 眠った振りをしながら、松原友(まつばら とも)は見回りの教師に心の中で謝った。彼女の布団は襖からもっとも近い。気配を悟られやしないかと冷や冷やモノだった。
 ……開いた時と同じく静かに襖が閉じられ、足音が遠ざかる。
 修学旅行の部屋割りは六人一組。その内、頭を出していた二人は目を開いた。
 そして、身体全体を潜らせるようにしていた三人が、身体を起こした。
「あー、苦しかった。窒息するかと思ったぞ」
 友の右に潜んでいた池田秀明(いけだ ひであき)が大きく息を吐きながら、髪を整え眼鏡を掛け直した。
 そして、彼女の正面では、胡坐をかいた八尾護(やお まもる)も小さく頷いた。暗い部屋の中、彼の鍛えられた肉体は、さながら巨大な岩のようだった。
「……そうだな。何より布団が小さすぎる」
「そりゃ、護の身体が大きすぎるんだってば」
 友から最も遠い、窓際で布団を整えている小柄な影は、堺小次郎(さかい こじろう)。相変わらず、マメな少年だった。その割に、自分の寝乱れた浴衣は直さないのだからよく分からない。
「そうか」
 護は静かに頷いた。納得したのだろう。その彼の隣から小さな影がにじり寄った。
「ドキドキしたね、護君」
「あ、ああ」
 そのまま彼女は、護の膝の間に座り込んだ。小次郎とほぼ同じぐらい小柄な少女の名前を、佐野いちる(さの いちる)という。
 いつもは結って束ねて後でまとめている髪はそのままに、垂れ目がちの大きな目が護を見上げた。
「えっへっへー」
「……」
 微笑み、猫のように身体をすり寄せる彼女に、護は照れ隠しにそっぽを向きながら頭を撫でた。
 巨漢の護と、小さないちる。ちょっと見には、大人と子供のようなカップルだった。ちなみに身長差は四十センチ以上ある。
 ……ふと、自分の髪をいつものポニーに束ねていた友は、隣の視線に気がついた。
「な、何、ヒデちゃん?」
「いや、佐野ちゃんみたいなの、オレもしてみたいかな、と」
 真面目な顔で秀明が阿呆な事を口走る。
「いや、ボクがヒデちゃんにしてどうするの」
「じゃあ、お前がするか? ヘイ、カモン」
 パァン、と秀明は自分の膝を叩いた。
「はいはい……あれ?」
 最後のもう一人が起きて来ない。
 秀明を越えた窓に最も近い向こう側、小次郎の正面の彼女はいまだに眠ったままだった。布団をたたみ終えた小次郎が、心配そうに高槻永世(たかつき ながよ)の様子を確認する。
「永世ぉ……本当に、眠っちゃったのか?」
「……起きている」
 永世は、ゆっくりと呟くように囁いた。
「そっか。静かだから気付かなかった」
 小次郎はいつもの人懐っこい笑みを浮かべているのだろう。少し乱れた長い黒髪を抑えながら、永世も身体を起こした。
「もう少しで、本当に危なかったけど」
「その時は、まあ、僕も寝てたな」
 それにしても、何故この二人は正座して話し合っているんだろう。
 そんな事を友が思っていると、秀明が嘆かわしいと首を振った。
「いやいや、しかしもったいないだろ。こんな機会、滅多にないぞ?」
「……こんな機会、何べんもあったらそれはそれで怖いよ」
 幼馴染みのボケなのか本気なのか分からない発言に、友はすかさず突っ込んだ。
「ともあれ、見回りは去った。後は、うちの担任が宴会モードで連中を足止めしてくれる筈だから、当分は大丈夫だ」
「どういう根回しをしたんだか」
「まあ、後は他の連中の心配だが、これは俺達がした所でどうしようもない。俺達は俺達で始めよう」
「本気でするの?」
「今更。それについては、前に散々話し合っただろう。なぁ?」
「うん。恥ずかしいけど、こういうのって多分、二度とないしね」
 いちるは手を合わせながら、護に顔を向けた。
「……せっかくだしな」
 その斜め向こうでは、小次郎が恋人にもたれかかる。
「記念といえば記念か」
「……私は、小次郎がいいなら構わない」
 小次郎を後ろから抱き込むようにしながら、永世も答えた。
 部屋は暗く、表情は今一つ良く分からない。
「という訳だ。ま、当然照れはあるだろうが、正直に行こうやトモ。どうよ、実際」
 秀明は胡坐をかきながら、友に尋ねてきた。
「つまり、ここで良識ぶるのはただの偽善と」
 友は、肩を竦めた。
「そういう事……あ、でもみんな、なるべく声は控えめにな」
「……分かっている」
 胡坐をかく護に、いちるが仔猫のようによじ登っていた。「ってもう、始まってるし」
 秀明の言葉に、護は微妙に困った表情を作った。
「いや、これは始まっているというか……」
 そうこうする内にも、膝立ち状態のいちるの顔は護の真正面にあった。
「別に、スタートとか決めてないんでしょ? それに、待ってる方が何か恥ずかしいし……ほらぁ、護君も」
「あ、ああ……」
 いちるは護にしがみついたまま、彼とキスを交し合う。そのまま二人の間で、荒い息が響き始めた。
「……すごいなぁ、いっちゃん」
 いちるの幼馴染である小次郎は、ちょっと感心したような声を上げた。
 その声の響きに残念そうな色は、もうない。
 けれど。
「小次郎……」
 やはり、それでも不安な永世は、無意識のうちに彼の裾をつかんでいた。
「ん? ああ、悪い。けど、心の準備は出来た?」
「ええ……あんまり、あっち見ないで」
 不安と、嫉妬だった。
 それを見抜いているのかどうかは分からないが、小次郎は振り返って顔を上げた。
「んー、なるべく」
 身長差から、どうしても永世が彼を見下ろす事になる。
 小次郎の瞳の中に自分しか映っていないのを安心すると、永世は彼に口付けた。
 小次郎の身体に腕を回し、そのまま後ろに倒れる。
 彼は、軽く体勢を整えると、再び永世の望む通りキスを続けた。技術は拙いが、激しく貪りあうようなキスを繰り返す。
「さて、二つとも始めた訳だ」
 秀明は、楽しそうに睦みあう二組を眺めた。
「……ずいぶん、余裕だったね。いつもケダモノのくせに」
 衣擦れの音と次第に高まりつつある熱気に、友の頬が自然と紅潮する。
「今回はプロデューサーも兼ねているもんでね。さて、トモ、こっちおいで」
「もー、子供扱いしないでよ」
 言いながらも、友は手招きする秀明に近づいた。
 彼の身体に、背中を預ける。
「そんなのお互い様だろ? んー、佐野ちゃんが上手いな」
 護に浴衣を脱がされながら、いちるが振り返った。
「えへー、ありがと。でも護君、身体上るの大変なんだけど……」
 白い肢体をむき出しにしたいちるが、また背伸びした。そうしないと、護へのキスが難しいのだ。
「分かった」
 不意に太い両腕が背中に回ったかと思うと、いちるの身体が護と共に前のめりに倒れた。
「きゃー」
 足をばたつかせながら、いちるは自分のささやかな胸を護の分厚い胸板に押し当てた。真っ赤になる護が面白く、悪戯っぽい笑みを浮かべながらさらに身体を預ける。
 身体を伸ばして護とキスを繰り返しているうちに、いちるは自分の胸の先が次第に固くなっていっているのに気がついていた。
 その感触が心地よく、彼女は癖になったように何度も護へ身体を擦り付けた。
 もぞつくいちるを眺めながら、秀明も友の浴衣をずらし始めた。
「面白がってるなー、佐野ちゃんは」
 引き締まった身体と共に、胸がこぼれ出る。
 秀明の手が、友の胸を包み込んだ。
「……ヒデちゃん、観察しながら…っ…胸揉むのやめてほしいんだけど」
 恥ずかしそうに睨み付けながら、それでも友には彼の手を退ける気はない。秀明の手が自分の胸を揉むたびに、思わず声を上げそうになるのを、友は唇をかみ締めて堪える。
 後ろで秀明が笑っていた。
「しっかり見てほしいって?」
 スッとその手が下がった。
「馬鹿……いっ、ちょ、ちょっとヒデちゃん!?」
 胸が涼しくなったと思った途端、下半身が涼しくなっていた。
 友の声に、それまで互いの愛撫を行っていた二組が注視する。
 魔法のようなテクニックでショーツを引き抜いた秀明は、彼女の足を大きく開いていく。
 秀明の胡坐の上で大股開きにされているのを皆に見られ、カーッと友の顔が熱くなった。
「しーっ……お静かに。いやまったくもう、見てばっかりじゃ不公平だからな。こっちからも見せてあげないと」
 言いながら、秀明の手は内股をさする。
「み、見せてるの、ボクだけじゃないかぁっ!?」
 股間が熱くなるのを感じながら、友は身じろぎした。浴衣は大いに乱れ、もう衣服としての役割は果たしていない。
「野郎のモノ見ても、誰も楽しくも何ともないと思うぞ?」
 右手で胸を愛撫し、左手を徐々に股の中心へ向かわせながら、秀明が耳元で囁く。友の二の腕に鳥肌が立つが、決して不快ではない。
「あっ……わたし、ちょっと興味あるかも」
 そういういちるは、護の身体に舌を這わせながら小さな乳首を指で弄られていた。
「……って言ってるけど?」
 耳の裏から首筋へと秀明の舌が滑り、友は自分の声がうわずりそうになるのを堪えた。けれど、それと同時に右手の指が硬く尖った胸の先端を捉え、左の中指はいよいよ濡れた花芯に到達していた。
「好奇心旺盛は結構だけど、護のと比べられるとさすがにちょっと自信がないぞ、オレは」
 言いながらも、秀明の指は休まない。
「大丈夫だよ。それ言ったらわたし、二人に身体で負けてるし」
 自分の股間から響いてくる水音がひどく恥ずかしい。
 半ば上の空で、秀明といちるの話を聞いていた。
「……って、うわぁ……あっちもすごいね……」
「ああ、新たな一面を見たって気分だ」
 自然、友もそちらの方を向く。

●Nagayo Takatsuki
 その永世は、小次郎に組み伏せられていた。
「っ……」
 いつもより、自分が感じているのに永世は気付いていた。
 自分の肌に小次郎の舌や手が這うたびに、腹奥の熱い疼きが昂ぶっていく。
 原因ははっきりしている。向こうからの視線だ。それは、間違いない。
 小次郎も、自分の変化に気付いていたようだった。
「恥ずかしいなら、目を閉じてれば?」
 陰になって分からないが、多分心配そうな顔をしているのだろう。
 彼は、永世が最後まで乗り気でなかった事を知っていた。
「それは……困る。顔が見れない……」
 我ながらずるい、と思う。
 何が耐えられないといって、自分より他の女に注意を向けられるのが一番嫌だった。
 ……絶対嫌。
 目の前にある小次郎の顔に、永世は唇を寄せた。

●Hideaki Ikeda
 永世が下から小次郎の身体を抱きしめ、ディープキスを繰り返す。
 その間も小次郎の手は休まず彼女の身体を愛撫し、股間を捉えると彼がやりやすいように股を開いていく。微かな明かりが、愛液の存在を反射させていた。
「あっちの二人は、あんまり他を見る余裕はなさそうだなー」
 秀明は、それを観察しながら呟いた。そんな彼の腕の中で友が弱々しくもがく。
「ヒ、ヒデちゃんが……器用すぎるんだよぉ……何でそんなよそ見しながら……っ……ちょ、駄目ぇ!」
 面白いなぁ……。
 そんな感想を抱きながら、秀明は秘処への二本の指の抜き差しを早めていく。
「濡らしとかないと痛いぞ」
 充分すぎるほど濡れているのは分かった上での発言だ。彼の指が引き抜かれるたび、中にたたえられた淫液が掻き出され、音を響かせる。
「そ、そういう問題じゃなくてぇー…っ…あ……んんっ……あーもぉ……馬鹿はこれだからぁ……」
 首を振りながら、友は秀明に表情を覗かれないように顔を俯かせた。
「馬鹿って……成績はオレの方が上なんだけどなー……それに、何だかんだ言っても、力抜けてきてるじゃないか。そもそも、準備がいるのかね、これは」
 引き抜いた指を、友の目の前に突きつけた。人差し指と中指の間で透明な糸が引く。
「だ、誰のせいよぉ……っ……うー」
「いや、挿れていいのか悪いのか迷っていまして……あいたっ」
 顎から突き上げるような衝撃が来た。
「いい加減、怒るよ?」
 涙目で拗ねるような表情をした友が振り返った。
「はい、だうもすみません……あいたた……こんな時に殴れる人間なんて、そういないぞ」
 機嫌をとるようにキスをしながら、再び指を友の中に戻す。
 多少は機嫌が直ったのか、友も短い息継ぎを続けながら、秀明のキスに合わせてきた。
「んっ…んくっ……んむ…は……あんっ…ああぁ……ゃ、わざと音立ててる……」
「あーあ、言わなきゃバレないものを……こら、逃げるな」
 秀明は、再び友の足を抱えなおした。

●Mamoru Yao
 護の口の中を舌で弄んでいたいちるが顔を上げた。
「んー、護君、わたしあっち見たいー……」
 ねだるように、身体を擦り付けてくる。
 姫様は、ひどく後ろのやり取りが気になるようだった。
 護だって気にならない訳ではないが、いちるを見ている方が面白い。
 なおも甘えるいちるが護の頬やら首筋やらを舐め始めたので、くすぐったくてしょうがなかった。
「止めはしないが」
 護は、いちるの身体を持ち上げると、そのまま秀明達を見れるように反転させてやった。
 ……大人しくなったかと思うと、今度は自分の股間が唐突に涼しくなった。
「代わりにサービスするねー……」
 生暖かい粘膜の感触と共に、剛直に強い刺激が生まれる。
「お、おい」
 小さな手が根元を掴みながら、もう一方の手で竿をしごく。
 どこで勉強しているのか、いちるの口唇奉仕は的確に護のポイントを突いていった。
「他の人に見られるのは恥ずかしいかもしれないけど、我慢するー……」
 護は軽く足をパタパタさせるいちるを落ち着かせると、股間を覆う布地をずらした。
 一筋の線のような割れ目が濡れているのを確かめ、護はそこに顔を埋めた。
 ……秀明達も見られるだけでは不公平だろう。
「んんっ……あ……護君……舌、ちょうだい……ん、む……くぅっ……」
「……承知」
 いちるの奉仕にさらに熱がこもるのを感じながら、護はいちるの秘処に舌を侵入させていく。

●Kojiroh Sakai
 小次郎の耳にも、どうしても二組のやり取りは聞こえてしまう。
 という事は当然、永世にも聞こえているだろう。
「……やっぱり、気になる?」
「そんな事は……ない」
 彼女はそっぽを向いた。
「ならないんだね?」
「ぅんっ……ん……ごめん、ちょっと気になる」
「いや?」
「いや……じゃないけど、私は小次郎に集中していたいから……」
「うん?」
 永世が身体を起こした。
 本気になれば小次郎の方がずっと力は強いけど、彼は永世に身を任せる事にした。
「いつもの、する」
 永世は愛しそうに小次郎に口付けると、そのまま顔を下げていった……膝立ちになった彼の股間に。

●Tomo Matubara
「……いつもって、おいおいおい」
 秀明は、友の後ろで小次郎の股間に顔を埋める永世の様子を注視していた。
「ひ、人それぞれでしょ? そんな……マジマジと見るもんじゃないよ」
 もっとも、同じように見ている娘がもう一人いるが。二人とも妙なところで器用らしく、視線はそっちなのに、口だの手だのは一向に休む気配がない。
 長い愛撫が続き、友にはもはや抵抗する気力もない。
「そ、それはそうだが……あれがいつもって……うわ、想像したら立ってきたぞ」
「ヒ、ヒデちゃんは元々でしょっ!?」
「あ、分かるか」
 自分の尻の下で硬くなられては、嫌でも分かるというものだ。
「ったくもー……真面目にやってよ……」
 自分以外で興奮されるというのは、何だか妙な嫉妬心が沸いてしまう。原因をたどれば、後ろから自分を弄り倒している男が諸悪の根源なのだが。
「真面目にやったらやったで恥ずかしがるくせに。ほら、さっきより音が鳴ってる」
 わざと指を乱暴にされ、友は首を振った。
「や、やだぁ……い、今だって恥ずかしいんだよ……? あ、あんまり大声は駄目なんだからぁ……」
「今更だが、用心に越した事はないな……塞ぐか」
 何をか尋ねる前に、唇を押し付けられた。
「んっ……んんぅっ……!?」
 自分の秘処が、秀明の指で広げられる。
 いつの間にか取り出されていた彼のモノが、友の股間の間から姿を現していた。光っているように見えるのは、友の愛液だろう。
「そう、このまま挿れる……見られながらな」
 友の身体が持ち上がったかと思うと、太く熱い杭が彼女に突き刺さった。
 充分にほぐされ濡れた膣は、彼のモノを締め付けながら自重によってより深くへ咥え込んでいく。
「ふぁっ……こ、この鬼畜ぅ……」
 言いながらも、挿入される快感だけは否定しようもない事実だった。
 友は声を殺し、秀明のモノが入ってくる感覚に集中する。
 不意に、心地よさの中で、膝裏に手を当てられる。
「はい、皆さんご注目」
 限界まで股を開かされた格好で、友はいちるや小次郎の視線を浴びる事となった。
「いやああぁ……やっぱりこいつ、馬鹿だぁ……」

●Ichiru Sano
 馬鹿、と相方を罵倒しながらも、やはり友は気持ちよさそうに見えた。
 秀明が腰を揺らし始めると、もはや口答えも出来ない様子で、やがて自分からも腰を使い始める。
「ん……うわぁ……トモちゃん、すごい……ん……んんっ」
 ……自分もあんな顔をしているのだろうか。
 とても口に収まりそうもない巨根を手と舌で愛しながら、挿入された時の感覚を思い返す。いや、その必要はない。じきに、それは現実のモノとなるのだから。
 ただ、いちるの膣は小さく、護の逸物は人一倍大きい(らしい)。
 だから、二人の愛撫はいつも念入りだ。
 一度気をやるぐらいまで高め合ってからでないと、とても繋がる事など出来ない。
「どうなってる?」
 そう尋ねる護も、舌でいちるの中を慣らしていく。
「足開かされて、秀君に入れられてる……繋がってるとこが丸見えでねー……ん、ああっ!!」
 肉芽から後ろの穴まで何度も舌の往復を繰り返され、いちるの腰が勢いよく跳ね上がる。が、護の強い力は完璧なまでにそれを制していた。
 決して彼女を逃がさず、自分の攻撃を全ていちるに与えていっていた。
「すると、この音は……」
「うん……トモちゃんの腰も、すごいエッチに動いてる……」
「そ、そこ、実況中継しない!」
「だって、護君見えないもん……は……ん……でも、こっちも……すごいの」
 自分も欲しいなぁと思いながら、目の前の肉棒を口に含んだ。全部は飲み込めないが、先端全体を口全体と舌で愛すると、護はひどく悦ぶのだ。
 鈴口を吸い上げ、雁の部分にほんの少しだけ歯を立てる。
 案の定、口の中で亀頭が興奮で膨れ上がる。
「いちるも、いつもより濡れてる」
「そ、そうなんだ……うわぁ、音が響いてくるぅ……」
 耳からではなく、下半身から直に脳へ響いてくるようだった。
「んー、でも、護君のも……」
 いちるは、手で竿に自分の唾液を馴染ませながら、彼のモノを観察した。
 やっぱり、普段より大きいような気がするけど……。
「言うな」
「はぁい」
 護の太い指がいちるの中に侵入する。
 その感覚に背を仰け反らせながら、護の裏筋を指で何度もなぞり上げる。
 再び先端に吸い付きながら、もう一方の手で手袋を揉んだ。
「佐野ちゃんよ、どこで覚えたんだ、そんなの」
 秀明の声にいちるは顔を上げると、粘液の糸が唇と肉棒の間で橋を作った。
「ほぇ? 覚えるって……してたら……普通相手の気持ちいいとこって……分かるでしょ?」
 変な気分だなぁ……といちるは思う。
 ひどく恥ずかしいのに、もっと見せつけてみたい気もする。
「まあ、なあ……たとえば、トモならこういうのとか……」
「んぁっ……ゃっ……あ…っ……」
 どうやらいつの間にか、友は一度達したらしい。
 乱暴な秀明の動きに、弱々しく反応するだけの存在になっていた。
「んー……やっぱりわたし達とちょっと違うかな……護君は…ん…んん……もっと優しいもん……今だって、指、乱暴にしないし……」
 目の前の肉棒に専念しながら、いちるは答えた。
 今も、護の指はいちるの膣内をほぐすように往復を続いている。
 それはひどくゆっくりで、けれど焦らすつもりで行っているものでないのも、いちるには分かっていた。
 身体の奥の熱はなおも高まる。
「護君、もっと……激しくしてもいいよ」
「大丈夫か?」
「護君も……一回出したいでしょ?」
「……」
 意味を悟ったらしく、護の指が引き抜かれた。
 代わりに侵入してきたのは、柔らかな粘体だ。
 それは、いちるの膣内で時に尖って前後し、中で揺れて濡れた肉襞をなぞり上げる。
「は、うっ……護くぅん……!」
 懸命に下からの強い刺激に耐えながら、彼のモノを舐めしゃぶった。
 しかし護の責めはそれだけにとどまらない。
「ひうっ!」
 敏感な肉芽を親指で弄られ、危うく歯を立てそうになる。
 いちるはそれをこらえ、自分に飲み込める精一杯のところまで護のモノを口に含んだ。「んぐっ……んっ…んぅっ…ぅんっ……ん、ん、んんっ!」
 手も同時に駆使しながら、激しく頭を上下させる。
 既に充分昂ぶっていた二人は、同時に限界を迎えた。
 最後に護の舌が思いっきり、いちるの肉襞を抉るように動いた。
「んうぅっ……!!」
 その衝撃に頭を真っ白にしながら、いちるは口内に迸った精液を嚥下した。
「……」
 護も、絶頂に震えるいちるの腰をしっかりホールドして、舌の運動を緩めていく。
「ん……ふぅ……ん……んっ……んぅっ……」
 唇の端から竿へと垂れていく白い雫を指で止めつつ、長々と射精を続ける護の肉棒を、いちるは決して口から離さなかった。
 やがて、護のモノが少し柔らかくなったのを確かめると、いちるはようやく顔を持ち上げた。
「はふぅ〜……いっぱい出たぁ……」
 大きく深呼吸し、指に付着した精液を舐め取る。
 同時にいちるの秘処からも、護が顔を離した。
「大丈夫か」
「うん、全然へーきだよ。まだ、序の口だしね」
 護とする時は、大抵一度では済まない。
 護が絶倫という事もあるが、いちる自身、自分の最奥をゴンゴンと貫かれる心地よさに夢中になってしまい、何度も彼を求めてしまうのだ。
 そして、今日はそれがまだ果たされていない。
 手の中で徐々に硬さを取り戻し始めた護のモノに、いちるは顔を寄せた。
 少し離れた場所から聞こえる淫音に視線をやりながら、恋人の精の残滓を舐めとっていく。

●Nagayo Takatsuki
 見られている。
 分かってはいても、小次郎への奉仕を止める事は永世には出来なかった。
「ん……んぐ……んくっ……ふ……んんっ……!」
 四つん這いになりながら、自分自身で首を前後させ何度も喉奥まで彼のモノを飲み込む。
 それはひどく苦しく、しかし同時に永世に快感を与えていた。
 小次郎が呻くたびに、自分が彼に快感を与えられていると実感出来るから。だから、より口唇奉仕に熱がこもる。太股を熱い淫液が伝うのも、そのせいだ。
「お前、いつもそんななのか?」
「あ……ああ、まあ」
 秀明の問いに、小次郎が曖昧に頷いたようだった。
 小次郎の手は軽く、永世の頭に添えているだけだが、傍目には自分の欲望を引き出す為、強引に永世の頭を前後させているようにも見えない事はない。
「ちがぅ……小次郎じゃなくて……っ……私が……」
 反論しようとする永世の頭を、小次郎が優しく撫でた。
「喋りにくくない?」
 永世は首を振り、彼のモノに舌を這わせた。
 四つん這いのまま自分の手を股間にしのばせると、熱くトロリとした液体は指を濡らした。指で女の弱いところを触れているのに、それよりも撫でられている頭の方が遥かに心地が良いのは、不思議な感じだった。
 再び、永世は唇を開いて小次郎のモノを受け入れていく。
「……ん……いい……このままで……んむ……んぐっ……んんっ……」
「永世?」
 小次郎が、永世を見下ろした。
 この手にもっと、頭を撫でて欲しかった。だから、永世はもっと彼を気持ちよくしてあげないといけない。
「このまま…んぅ…んくっ……は…ぁ……出して……」
「ん……」
 小次郎が初めて腰を突き出した。
 喉奥を突かれる苦しさを、永世は甘受する。
 口の中に溜まった唾液が、引き抜かれるたびに口から溢れジュボジュボと音を立てた。
 永世は自分を慰める指の数を二本に増やし、激しく抽送した。当然その指のイメージは今、口の中にある彼のモノだ。
 グッと腰を掲げ、前後の穴で小次郎を受け入れている妄想が、永世の頭を支配する。
「んっ……んっ……んんぅっ!」
「あっ……な、永世……出るよっ……!」
 虚ろになった頭で、永世はその声を聞いた。
 二本の指を根元まで沈めると同時に、喉を強い勢いで液体が叩いた。
 あっという間に小次郎の精液が永世の口の中を満たす。
「んんっ……んふっ……!」
 ためらう事なく永世はそれを飲み込んだ。
 強い臭気のする体液を尿道から吸い出しながら、小次郎の手が優しく頭を撫でてくれている事に、永世は安堵の鼻息を漏らした。

●Hideaki Ikeda
 なおも小次郎の股間に顔を埋め、彼のモノに奉仕を続ける永世に、秀明といちるは唖然としていた。
 顔を見合わせる。
「意外……」
「……だよねぇ? って、トモちゃん、大丈夫?」
「何が?」
 いちるに言われ、秀明は彼の膝の上に乗る少女に視線をやった。
「虫の息」
 なるほど。
 足を大股開きにされたまま機械的に秀明に貫かれていた友は、汗びっしょりになりながら全身を弛緩させていた。
 痴呆のような顔で、彼が動くに任せている。
「ありゃぁ……ちょっと気を取られすぎてたかな。動けるか?」
 秀明は、友の頬を軽く引っ張った。
 友が、重く頭を上げた。
「ふざ……けないでよぉ……動けるわけ……ないでしょぉ……っ!?」
 彼女のダラリと垂れ下がっていた腕が、腰の前後運動の反動に合わせて持ち上がった。
 遠心力のついた肘が、秀明の顎を再び捉えた。

●Mamoru Yao
 護には見えなかったが、打撃音の正体は会話から何となく見当がついた。
 不意に目の前の尻が浮いた。
 かと思うと、護の身体の上でいちるが反転した。
「護くーん……」
 再び、いちるが伸し掛かってくる。
「ん?」
「わたしも欲しくなってきちゃった」
 足をパタパタさせながら、ねだってくる。
「……見ていなくていいのか?」
 頭を撫でながら、護は尋ねた。
「今は、護君の顔を見てたい気分なの」
 ぎゅーっと甘えるように抱きついてくる。
「そうか」
 それを緩めさせ、護はいちるの身体を起こした。
「代わりに、護君が見てて。せっかくだから、護君も参加しなきゃ損だよ」
「分かった……」
「じゃ、入れるね?」
「ああ」
 いちるの腰が持ち上がり、すっかり元気を取り戻した彼のモノに手を添える。
 小さな割れ目に、先端が押し当てられる。
 いちるが腰を下ろすと、濡れてほぐれた膣に肉棒が包まれていく。
「あ……んうぅぅぅ……っ!」
 口に拳を当てながら声を殺すいちる。
 いくら受け入れられるようになったとはいえ、いちるの締め付けは相変わらずきつい。しばらくは動かないのが、彼らの暗黙の了解となっていた。
「ん?」
 ふと、いちるの両腕が護に向かって伸ばされているのに気がついた。
 護はその両手首を掴むと、腹筋に力を入れて上体を持ち上げた。
 いちるが、彼の胴体にしがみつく。
「えへへー……だっこ」
「そうか」
 護は胡座を掻くと、軽く上下運動を開始した。
 それぐらいが心地よいらしく、いちるは腕に力をこめながら小さく喘ぎを漏らした。
「本当に、まるで大人と子供だな、お前らの組み合わせって」
 秀明の声に、護は久しぶりに天井以外の景色を見たような気がした。
「いちるは充分大人だ」
 でなければ、自分と繋がる事など出来ない。
「そういう意味じゃなくて……ああ、もういいや」
 すごい光景だな、と護は思った。
 秀明と友が背面座位で交わり、繋がっている部分を露わにしている。
 さっきまでの会話から察するに、彼女はもう何度も達しているのだろう。
 汗で身体を濡らしながら、力なく顔を俯けている。
「秀明、大きなお世話かもしれないが、松原さんにもっと優しくしてやれ」
「はっはっは……げふっ」
 笑って誤魔化そうとした秀明が、苦悶の声を上げた。
 どうやら、友の肘が脇腹に突き刺さったらしい。
 そしてもう一方では、小次郎と永世が正常位で繋がっていた。大きく広げられた足の間に小次郎の身体が割り込み、激しく腰を動かしている。

●Kojiroh Sakai
 その視線に、小次郎は気付いていた。
「永世……」
 永世から顔を離し、ペットボトルを布団の隣に置いた。
「あっ……あんっ……私も、動く?」
 口移しに流し込まれた水を飲み込んだ永世が尋ねる。
「そうじゃなくて……見られてる」
「……私は、気にしない」
 言い、永世自身も腰を使い始めた。
 複雑な動きが、小次郎の肉棒を刺激する。
 それに負けないように小次郎は彼女を貫きながら、首を振った。
「そうじゃなくて、もったいない」
「……?」
 分からない、という風に永世が小次郎を見つめる。
 半開きになった瞳は、彼しか見つめていない。
 再び彼女に顔を寄せながら、小次郎は囁いた。
「僕らばかり見られて、こっちはいつも通りじゃ何かもったいない気がする。元が、取りたい」
 唇を重ねると、永世は心得たように口を開く。
 互いの口内に舌に乗せた唾液を交換させあう。
「ん……小次郎、それはただの貧乏性だわ」
 蕩けるような表情で、さらに永世は彼の口を求めた。
「ぁ…んんっ…そうかもしれないけど…っ…ん…くっ…いつも通りだと…今回の趣旨にも反するし……要するに、『せっかくだから』かな……?」
 小次郎が考えながら言うと、永世はようやく顔を離した。
「……分かったわ」
 その残念そうな表情も、普段なら滅多に見ることが出来ない。
 小次郎は首を振った。
「また、勘違いしてる。見るのは、僕だけじゃなくて永世もだよ」
 腕に力を込め、小次郎は永世の身体を持ち上げた。
「え、あっ……きゃぁっ!?」

●Tomo Matubara
 どこにそんな力があるのか、小柄な小次郎が永世の身体を繋がったまま引っくり返し、四つん這いにした。
 彼女を後背位にすると、傍らにあった眼鏡に手を伸ばして永世に掛けさせる。
「小次郎、いつも、眼鏡掛けてやってるのか?」
 秀明の質問に、小次郎は首を振った。
「今回は特別だよ。暗いし、そっちが見えないからね……見えてる?」
「え、ええ……」
 恥じらうようにしながらも、小次郎の言葉だからだろう、永世は顔を背けようとはしなかった。
 すなわち、友の痴態から。
「よーし、じゃあ俺も、もっとよく見えるようにしてやろう。トモ、協力しろ……あぐっ!?」
 残っている気力で、友は精一杯肘を突き上げた。
「ば、馬鹿ぁっ……わざわざ煽るなぁっ!」
「痛たたた……やってる最中に殴るなっての」
「だ、だって、恥ずかしいんだよ? 分かってるでしょ、そんなの!?」
「まあ、それが狙いの一つなんだから、お前も諦めろ……諦めなくても、どーしようもないしな」
 友は、唐突に胸を鷲づかみにされた。
 反射的に拳を握り締めたが、秀明に両手で乱暴にこねくり回されると、そこから力が抜けていく。
「んぅっ…ふぁっ……ず、ずるい……これ、ボク、抵抗出来ないじゃないかぁ……!」
「いやいや、したければすりゃいいじゃないか……どこまで出来るかまあ、見ものだが」
 身体をよじりながら、秀明の手を振り解こうとするが、彼の技巧の方が上手だった。
 次第に手の力も弱まり、彼の愛撫に身を任せてしまう。
「……普段もそんななのか、二人とも」
 呆れたように、護が尋ねる。
「教室じゃ、いつも見てるだろ?」
「そーゆー意味じゃなくて、こういう状況でって話なんだけど……ちょっと驚いてる」
 小次郎も護と同意見らしかった。
「は、ぁ……ほらぁ……やっぱり普通じゃないよ、これ……ん、くっ……んんっ!」
 再び抵抗を試みるが、今度はいきなりの腰の上下運動にそれを阻まれてしまう。
「あ! 護君、ちょっと!」
 護にしがみついたまま、いちるが小さく叫んだ。
「何だ?」
「トモちゃんのイクとこ、ちゃんと見たい!」
 とんでもない事を言う。
「分かった……しっかりつかまってろ」
 護はいちるの尻を掴むと、ゆっくりと歩き始めた。
 その振動で、強くいちるの身体が揺さぶられる。
「あ……う、うんっ……! ま、護くぅん……ぁ…ん……こ、これ、いいよぉ!」
 必死に護にしがみつきながら、いちるは自我を保つのが精一杯の様子だった。

●All View
「は、ぁ……な、何ぃ? なんでみんら……集まって来てるろ……?」
 ろれつの回らない口で、友は徐々に近づいてくるみんなを眺めた。
「そりゃまあ、お前が乱れる様を見物にだろう?」
 彼らを挑発するように、秀明は力強い動きで彼女を突き上げる。
「んあっ、あっ、あぁっ……ゃあっ、み、見らいでぇっ……?」
「はぁっ…あ…あんっ……す、すごい……」
 永世が呟く。
「ん……永世も後で、みんなに見てもらうからね」
 小次郎が腰を押し上げた。
「んぅ…あっ………は、はい…っ…!」
 繋がったまま、永世も友に向かってさらに近づく。
 腕には力が入らず、ほとんど這うような形になっていた。
「ぅん……ん、んぅー……ね、ねえねえ、護君、見えないよぉ……」
「分かっている」
 護はその場に座り込んだ。
 そして、いちると繋がったままその身体を反転させる。
「ふぁ……あ……あっ……ありがと……うわ、トモちゃん……」
 いちるは畳に手をつきながら、至近距離で友の媚態を観察する。
「あ、あんっ、んぁっ、あぁっ!!」
 目と鼻の先なのに、友はそれに気づいた様子がない。
「見えてないね、もう……んー」
「あぁっ……!?」
 唐突に下から強烈な刺激が訪れた。
「さ、佐野ちゃん?」
 秀明が慌てる。
 小さな手が、友と秀明の繋がった部分に触れていた。
 その指がスッと淫核を撫でると、友はもう、口をパクパクさせて肺に空気を送り込む事しか出来ない。
「お触り、OK? してみたいの。今回はアレだよね。『思った事は包み隠さず。願望は正直に告白する。互いに遠慮は無用』なんだから」
「お、オーケー……オレはいいけど、護は?」
「いいよね、護君?」
「……それぐらいなら、構わん」
 えらく複雑そうな声音で、護は唸った。
「じゃ、遠慮なくお手伝いー♪ ほーら、トモちゃん、もう限界でしょ?」
 本気で遠慮なく、いちるは指責めを開始した。
「んうぅっ……あっ、やっ、やだぁっ……あ、あっ、あああぁぁんっ!!」

●Nagayo Takatsuki
「小次郎……」
 永世は、友が絶頂に身を震わせるのを眺めながら呟いた。
「うん?」
「私も……あんななの?」
 今の自分も、友のような顔なのだろうか。
 後ろから小次郎に貫かれながら、永世はそんな事を考える。
「んー、比較は出来ないかな。今度、ビデオにでも撮ってみる?」
「……考えておくわ」
 家にハンディカムがあった事を思い出しながら、永世は答えた。

●Hideaki Ikeda
「はぁ……あ……あっ……ああっ……」
「俺はまだ、終わってないんだけどなぁ……」
 前のめりになりそうになる友を、秀明は腕を回して支えた。
「ん……ごめん。でも……もうちょっと、待って……今、やばいから……」
「こっちはこっちで辛いんだが」
 ……とはいえ、あんまり苛めすぎちゃ可哀想だよなぁ。
 口に出しては言わないが秀明はそんな事を考えながら、友の回復を待つ事にした。
「くっふっふー、何だかんだ言って止めちゃう辺り、秀君は優しいよねー」
 いちるに指摘され、秀明は焦った。
「や、優しい言うな、佐野ちゃん。オレは悪人なんだ」
「でも、トモちゃんには……っ!?」
 いちるの声が唐突に跳ね上がる。
「いちる……俺もそろそろいいか?」
 ゆっくりと上体を後ろに倒しながら、護が律動を開始した。
「あ……ぅん。ずっと我慢しててくれたもんね……ふぁ、あっ、ああっ!」
 いちるは前のめりになりながら、恋人の責めを受け止める。
「身体ごと、浮き上がってるぞ、おい……」
「いちるは、軽いからな」
「わ、わたしも動くぅ……く…あっ……ふあぁっ!」
 自身で腰を回転させ、強烈に中を抉り込まれる感覚にいちるは背を仰け反らせた。

●Nagayo Takatsuki
「……」
「欲しくなった?」
「……ん」
 小次郎の問いに、ほとんど無意識に永世は頷いていた。
「じゃあ、ちょっと……こうやって……」
 小次郎は身体を傾け、永世の顔をいちるに近づける。
「あ……」
「こっちの方が、見やすいでしょ?」
 後ろから声が聞こえるが、永世はそれどころではない。
 いちるの喘ぎ顔が息が掛かるほど近くにあった。
 目が合うと、いちるは笑みを浮かべた。
「んぅっ! あ……そ、そうだけど……こ、こんなの……」
「永世も、しっかり見てもらうんだよ? やらしい顔」
「ぅ……ん…はい……」
 いちるの熱い息が、本当に顔に掛かる。
 それから、永世は目を離せないでいた。
「……『はい』、て」
 横から、秀明の声が聞こえたような気がした。
「あ、ああ……それに関しては、気にしないで」
「こー君……永世ちゃんにも……構っていい?」
『構う』が何を意味するかは、聞くまでもなかった。
「……」
 今の彼女の生殺与奪は、小次郎が握っている。永世は彼の言葉を待った。
 不意に、彼女の頭を小次郎の手が撫でた。
「本当に嫌なら、今拒んで。怒らないから」
「……」
 永世は目をつぶり、一度頷いた。それが答えだった。
「……いっちゃん、いいよ? ほら、永世、もっと近付いて」
「はい……」
 永世は伸びをして、これ以上近づきようがない所までいちるに近づいた。
「永世ちゃん……いいよね?」
 ほんの少し、いちるは顔を傾けた。
 永世の唇に、生まれて初めて恋人以外の唇が触れた。
「あ…んっ……んむっ……は……あ……んんっ!?」
 後ろから、唐突に強烈な刺激が来た。
 それは最近になって慣れた感覚だが……ある種の絶望感が永世を支配する。
 そこは、永世の新たな弱点で、責められると自分を見失うほどに乱れてしまう場所だった。
「こっちも、いつも通りするからね」
「あ……で、でも、今日は……」
 焦りながら、『そこ』にじわじわと入り込んでくる小次郎の指を受け入れていく。
「気持ちよくない?」
「い、いいけど……でも……でもぉ……」
 小次郎の指が、そこで止まった。
「じゃあ、やめる? 今から抜いて、耐えられる?」
 駄目だった。
 永世は大きく首を横に振って、それを否定した。耐えるなんて、とても出来ない。
「……続けて、下さい」
「うん。大丈夫だから」
 小次郎は、さらに菊座に指を進めていった。
「あっ……あぁっ……ひ、んっ…あぁっ……」
「うわぁ…永世ちゃん、すごい可愛い顔してるよぉ……」
 大きく口を開いて後ろの穴の責めを受け入れる永世に、いちるはキスを降らせていく。

●All View
「すげえ……オレ達の中じゃ、一番遅かったはずなのに……」
 今日、何度目の驚きになるのだろう。
 呆気に取られる秀明をよそに、友はようやく身体に力が戻ってきた。
「んん……ヒデちゃん…ボクも、そろそろいいよ……」
「つーか、正直見てて我慢できなくなった、と……だから、殴るなって!?」
 図星を指され、思わず友の顔が赤くなる。
「るさいなぁ……なんなら、動かないようにしようか?」
「ごめんなさい。オレが悪かったです……とか、言ったりして」
 心得たとばかりに、緩々と秀明が腰を動き始める。
 しかし、それとは別の刺激が、唐突に彼女の股間を刺激した。
「あっ……!?」
 てっきり永世に構っているとばかり思っていたいちるの指が、再び動き出していた。
「トモちゃんは…っ…永世ちゃんを…気持ちよくしてあげて……」
 永世とのキスを繰り返しながら、誘うような目つきでいちるが促した。
「で、でも、どうしたらいいか……」
「自分がされて気持ちいいって思う事を、してあげればいいんだよ」
 戸惑う友に、その言葉は魔法のように染み込んでいく。
 そして、身体を傾けた友は、永世の胸に手を伸ばしながら肌に舌を這わせていった。
 いちるは永世から顔を離し、友に向ける。
「あ……ん……ぅん……」
 ごく自然に、友と永世の唇が重なり合った。
 二人の手の平が、お互いの身体をまさぐりあう。
「そーそー。そうやって、吸って上げたりして。じゃ、わたしはまた、トモちゃんを気持ちよくしてあげるねー……」
 いちるは精一杯身体を伸ばすと、友の腹を舐めた。
 そのまま、指先で友の肉芽を撫でる。
「ん……んぅっ……は……あ、ま、またぁ……」
 軽く達っしてしまい、友は身体を小刻みに震わせた。
「トモちゃん、早いよぉ……」
「ああ、早いのはいつもの事だから……なあ、トモ」
「そ、そんな事ないよ……あ、んんぅっ……!」
 しかし、いちると一緒に秀明も突き上げてくるのだ。
 首を振って強がりながらも、連続して押し寄せてくる波に抗う事は出来ないでいた。
「一回イクと、何度も軽くイクようになってるんだよ」
「そうなんだ……んっ……でも、わたしも……あんっ…くっ……あ…集中出来ないよ、護くぅん……」
「……」
 いちるの抗議にも構わず、護は無言で腰を動かし続ける。
 その動きは、徐々に強まりつつあった。
「はっ、あっ、ご、ごめん……護君もぉ……ちゃんとするよ……ん、あ……ひうっ……! 永世ちゃん……?」
 永世の目はもう、何も見ていなかった。
 ただ、快楽に身を委ね、小次郎の動きに合わせて声を上げるしかない。
「んくっ……ん……は……あっ……ああっ! こ、小次郎……っ……あ、そこ、いい……もっとぉっ……!!」
 小次郎は指を二本、永世の後ろに捻り込みながら、激しく音が鳴るほど腰を動かした。
「こう、だね……ん……このまま、イクから……いいね? ちゃんと、いっちゃんと松原さんにもご奉仕するんだよ」
「はい…っ…んくっ…むっ…は、ぁ…あぁっ……んぅっ…ん〜〜〜〜〜っ!!」
 永世の中で、小次郎のモノが最後の膨張を遂げる。
 それを感じながら、彼女は必死に目の前の友の唇に吸い付いた。同時に、いちるの薄い胸に手を伸ばす。
「ぅん、くっ……んんぅっ!! ふぁ…あ……も、もぉ……らめぇ……っ」
 友は秀明といちるの同時責めに、たまらず背を仰け反らせた。
 しかし秀明の動きもとまらず、むしろエスカレートしていく。
「もうちょっとの辛抱……オレも……っ……!」
 何度も奥を先端で突かれ、友は快感に我を忘れていた。
「んんっ!! ふぁっ、ああぁんっ!!」
 最後の突き上げと同時に、熱い液体が友の腹の奥に広がった。
「あああぁぁっ!!」
 同時に、永世がその場に突っ伏し泣き声を上げた。
 小次郎が腰を密着させ、射精を開始する。
 最後に達したのは、いちる達だった。
「あっ、あぁっ、あーーーーーっ!!」
 高い声を上げて、いちるは自分の最奥に断続的に注がれる精液の熱さを感じていた。
 六人はそれぞれに身体を震わせながら、快感の余韻に身を委ねていた。

●Ichiru Sano
「ふぁ……あ……あ、あれっ?」
 次にいちるが意識を取り戻したのは、護の腕の中だった。
「いちる、俺はまだ足りない」
「あ、うん……わたしもするぅ……けど、力入んないの……」
 まだ、護とは繋がったままらしい。
「じゃ、ちょっとだけ休憩だ」
「ん……」
 いちるは、護の胸板に自分の顔を擦り付けた。

●Nagayo Takatsuki
「……大丈夫だった、永世?」
 天井を背景に、小次郎の顔が仰向けになった永世の顔を覗き込んでいた。
「ん……こじろぉ……」
 腕を伸ばし、小次郎にしがみつく。
 軽い小次郎は永世に巻き込まれるような形で、彼女に覆いかぶさった。
「うん、頑張った……好きなだけ続けていいからね」
「はい……ん……んっ……」
 永世は頷くと、小次郎と唇を重ねた。
 言葉通り、好きなだけ甘える事にした。

●Tomo Matubara
 友と秀明もいちる達と同様に繋がったままで、仰向けに倒れていた。
「はっ……はっ……はぁ……はーっ……」
「さすがにもう駄目っぽいな、トモは」
 友の髪を梳きながら、秀明が様子を観察する。
「あ、当たり前だよぉ……こ、これ以上したら……死んじゃうよ……」
「それも、また一興……あいたぁっ! げ、元気あるじゃないか、お前!?」
 軽いアッパーのつもりが、いいところに入ったらしい。
 ちょっとは回復したようだ。
「ヒ、ヒデちゃんがあんまり馬鹿なこと言うからだよっ!! それにしても……すごいよねー、みんな」
 友は、身体を起こして睦みあう二組を眺めた。
「雰囲気に当てられてるんだろ、多分。この調子だと、インターバル置いて第二ラウンドだか第三ラウンドだか知らないけど……本当にあるぞ?」
「うーわー……」


●All View
 翌日、大型バスの最後尾。
「すー……すー……」
 堺小次郎は、隣に座る高槻永世に身体を預けながら寝息を立てていた。
「……」
 永世は鉄面皮で、それを甘受するだけだ。
 傍目には、永世の機嫌は伺えないだろう。が、本人にとっては至福であった。
 しかし無粋な声がそれを打ち破る。
「堺ー? 堺はいるか?」
 永世のオーラが不機嫌に変化した。
「堺は寝ています。静かにしてください」
「……お、おう」
 静かだがきつい口調に、担任である黒須仁(くろす じん)は軽く退いた。
「まったく、気が利かないんだから」
 呟かれる。
「……生徒にそこまで言われるか、俺。あと、そこも! ツッコミ入れるべきか!?」
「高槻がさっき言ったように、静かにしてもらえると助かります」
 不動のまま、八尾護は抑揚のない声で答えた。
「い、いや、しかしなぁ……」
 彼の膝の上には、佐野いちるがしがみついていた。
「むに……すごいよぉ…まもるくぅん……もっとぉ……」
 胸板に顔を埋めながら、幸せそうな寝言が聞こえてくる。
「特に、他には迷惑を掛けていませんから」
「とりあえず、その寝言はなんか、ええと……止めるべきじゃないかと思うんだが……」
「わたしも、するぅ……」
 いちるの寝言にも、護は動じない。
「……無視していてください」
 ただ、バスの天井を眺める目は、やや諦観じみていた。
「分かった……ところで、池田」
「ふぁい?」
 仁は、欠伸をする池田秀明に顔を寄せた。
「分かっているだろうが、今晩は……」
「はいはい、お任せあれ。計画はバッチリですよん♪」
 秀明は小声で言いながら、指でOKマークを作った。
「そうか……」
 仁の視線は泳いだまま……とある席に固定した。
 童顔ポニーテールの女の子の身体が半分、バスの外に出ていた。
「って寺沢ぁっ! 窓から身を乗り出すなっ! あま……神代止めろっ!」
 仁は、彼女の隣でうたたねをしていた長い黒髪の少女を指差した。
「は、はいっ」
 その少女、神代天音(かみしろ あまね)は、ハッと目を覚ますと慌てて窓際の寺沢ちえり(てらさわ ちえり)を引き戻そうとする。
 だが、ちえりは平然としたものだ。
「でもせんせー、風気持ちいいよー?」
「先生」
 二人の座席に向かう途中、氷点下の声に仁は足を止めた。
「はい」
「静かに、と先ほど申し上げたはずですが」
「……き、気をつけます」
 恐縮しまくる仁をよそに、秀明は大きく欠伸を繰り返した。
「ふぁーあ……しかし、バスの揺れってーのは、眠気を誘うやね」
「……腰が痛くてそれどころじゃないやい」
 窓に頭を預けながら、松原友は呟いた。
「鍛え方が足りないんだよ、多分……げふっ!?」
 ほとんど前置き無しの友のリバーブローが、秀明の脇腹に炸裂する。
「どっかの馬鹿が無茶するからだよ!」
「こ……ここ……」
 腹を押さえながら、秀明は呻き声を上げた。
「うん? ちゃんと言わないと分からないよ、ヒデちゃん?」
「こ……今晩も、やるか?」
「絶対やだっ!!」
「そこもー、元気いっぱいなのは分かったから、もう少し静かにしてろー」
「全っ然、元気いっぱいじゃありませんっ!!」
 仁の声に、友は精一杯否定した。


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