料理を口移し






 しばらく渚の部屋でゴロゴロしていた二人は、夕方になって一階に下りた。
 腹が減ったので、夕食にする事にしたのだ。
「ん」
 セーターにスカートに着替えた渚は、その上にエプロンを着ける。
「いいね。中々似合ってる」
 清澄も、駅で回収した私服に着替えていた。
 席に座り、キッチンに向かう渚の後姿を眺める。
「えへへ、ありがとうございます。でも、私はてっきり……」
 渚は、自分の格好を見下ろした。あっさり着替えさせてくれた事が、少し腑に落ちないような表情だった。
「渚が予想してた事は、俺だって考えてた。が、こういうのは、普通の格好を見てからじゃないと面白くないかなと俺は思ったんだ」
「はい」
「料理はよくするのか?」
「お母さんの手伝いで、しょっちゅうです。先輩は、料理したりとか……?」
「たまにな。まあ、今回は渚に任せる。用意してたんだろ?」
「はい。口に合えばいいんですけど」

 数十分後。
 並んだのは、野菜スープに白いご飯、芙蓉蟹(カニ玉)だった。
「あまり、多く作り過ぎるのもよくないかなと思って……」
「いや、美味そうじゃないか。それに、俺にとっても好都合だし」
「はい?」
「リクエスト。ここで出すぞ?」

 二人しかいないのに、奇妙な席の並びだった。
 向かい合ってではなく、清澄の左隣に座らされた渚は、芙蓉蟹を口に含んで咀嚼した。
「……んぅ」
 ただし、喉には通さないように、清澄は言ってある。
 今、渚の口内には、流動食に似た食べ物が残り続けているはずだった。
「準備出来たか?」
 口元を押さえながら、渚が頷いた。
 そして、躊躇いながら清澄に顔を近づける。
「……ん」
 唇に触れる。
 いよいよだ。
 清澄が口を小さく開くと、ドロドロとした何かが侵入してくる。
 渚の唾液と卵料理の混合物だ。
「ぅん……くっ…んむっ……」
 清澄の襟元を握り締めながら、渚は口の中の物を送り込み続ける。
 噛む必要がまったくないそれを、清澄は躊躇わず嚥下した。渚の口の中を犯したい欲求にも駆られたが、とりあえず我慢する。
 渚が全部、口移しを終えたのを見計らって、清澄は唇を離した。
「ん……ふぅ……」
 目元を朱に染め、渚が吐息を漏らした。
「はぁー……」
 清澄も、ほんのわずか重くなった腹を押さえた。
 渚の口に卵の黄色い残滓が残っているのに気付き、脂っこいそれを舌先で舐め取る。
「んっ……あっ、く、くすぐったいですよぉ……」
 小さく身をよじりながらも、渚はそれを避けない。
 逆に舌を突き出し、清澄の唇の汚れを清め始めた。
「せっかくの料理がこんな風にされるのは、嫌だったか?」
「そんな事はありません……けど」
「けど?」
 渚は、もじ、と身体をくねらせた。
「また、エッチな気分になって来そうです」
「入れて欲しいか?」
「……はい」
 期待しているのか、潤んだ目で清澄を見つめてくる。
 そういう目で見られると、清澄の中の嗜虐心が刺激されてきた。
「食事の最中に、はしたないぞ」
「ご、ごめんなさい……」
 清澄がからかうように言うと、渚は素直に謝った。
「まだ、我慢だ。食べにくいだろ? だから、入れるのは無し。口だけで奉仕してもらう」
「……でも、先輩もぉ」
 清澄の襟元を握ったまま、甘えた仔犬のような声を上げる渚。
 その視線は、清澄の膨らんだ股間に移動していた。
「分かってる……けど、もったいないからな」
 今は、渚の奉仕や料理の味に集中したかったので、自分自身があまり刺激される訳にはいかなかった。
「それに、俺も奉仕するし」
「え?」
 スープを口に含み、渚に口付ける。
 一瞬驚いた渚だが、すぐにそれを受け入れた。目を瞑って、清澄が流し込んだスープを口の中に溜めていく。
「ん……んくっ……んうっ……うんっ!?」
 ビクン、と突然渚の肩が震えた。
 清澄の左手が、渚のお尻を撫でていた。その手が太股に移動し、スカートの中に侵入する。無意識にか、渚の足が小さく開かれその手を受け入れる。
 清澄と唇が離れ、渚は切なげな声を上げ始めた。
「は……ぁ……はぁっ…はぁっ……」
 身体に力が入らないのか、渚は荒い息を吐きながら清澄の胸に顔を埋めている。
 けれど、清澄の指は下着の上から渚の秘唇を弄り続ける。「入れて欲しい」と言っていた通り、その下着はうっすらと濡れていた。
「味は、どうだった?」
「よ、よく分かりませんでした……」
 下着を横にずらし、蜜壺に人差し指を挿入した。ろくに触れてもいなかったのに、そこはあっさりと清澄の指を受け入れていた。
「だろうなぁ」
 渚が顔を上げた。
「せ、せせせ、先輩、意地悪ですっ! それにずるいです!」
「ああ、意地悪してみた。俺はそういう男なんでね。でも、入れるのは駄目とは言ったが、触らないとも言ってないぞ。あ、ちなみにお前は触るのも駄目だ。今回はひたすら、俺にいたぶられるだけから」
「そ、そんなぁ……」
「嫌か?」
 なら、と清澄は渚の中に入れた指をゆっくりと引いた。
 それを食い止めようと渚の太股が閉じ、膣内がきゅっと指を締め付けた。
「あぁっ! やっ…ぁ…ぬ、抜いちゃやです……」
 半べそをかく渚に応え、清澄は秘処の中をゆっくりと掻き回した。
「先輩の…く…ぅんっ……そういう所が…ふぁ…ずるいです……」
「今更だな」
 ビクンビクンと身体を痙攣させる渚の様子に、清澄は小さく唇を歪めた。
「今更…ぁっ…です……」
「ほら、食事の続き」
 清澄は空いている右手で、渚にスプーンを手渡した。
「は、はい……」
 渚が受け取ったスプーンは、カタカタと揺れていた。
「あまり時間を掛けすぎると冷めるから、少し急ごうか」
「掛けてるのは、先輩ですよぉ……」
「ごもっとも」

 それから、長い時間を掛けて二人は料理を完食した。
 長い唾液の糸を引きながら、二人の顔が離れる。
「……ご馳走様でした」
「……ご、ご馳走様でした…ん……ふぅ…疲れました……」
 結局、料理を食べ終えるまで、渚は清澄の指で五回もイク羽目になった。
 ぐったりとした渚の背中を、清澄は優しく撫でた。
 ゆっくりと、渚が顔を上げる。
「でも……先輩よかったんですか? 私だけしてもらっちゃって……」
「ああ、それはいいんだ。確かに、俺自身がよくなるのも重要だが、渚が気持ちよくなってる顔を見るのも楽しいからな」
「……っ」
 ボムッと渚の顔が、蒸気が吹き出そうなほど真っ赤になった。
「よかったろ?」
 余裕の笑みを浮かべる清澄に、渚は指を突き付けた。
「う、うー……つ、次、私の番ですからねっ」
「分かってる」
「覚悟、しといてください」


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